コラム

自宅での看取りを支える訪問看護の完全ガイド 支援内容・症状緩和・家族サポート・24時間対応・利用開始と費用

自宅で最期を迎えるために訪問看護は何をどこまでサポートできるのか?

ご質問ありがとうございます。

自宅で最期を迎える「在宅看取り」において、訪問看護が何をどこまで支援できるのか、制度上の枠組み・臨床実務・限界点・利用の流れ・費用の考え方まで、根拠も交えて詳しくお伝えします。

訪問看護が在宅看取りでできること(実務の全体像)

– 症状緩和(フィジカルケア)
– 痛み、呼吸困難、咳・痰、嘔気・嘔吐、便秘・下痢、倦怠感、発熱、浮腫、創傷・褥瘡、出血傾向、せん妄や不眠などのアセスメントと対応
– オピオイド・鎮痛薬・鎮吐薬・下剤・抗不安薬等の投与管理、レスキュードーズの使い方指導(処方・用量変更は医師の判断)
– 皮下注や点滴(持続皮下注ポンプ等)の管理、在宅酸素療法、吸引、ネブライザ、経管栄養や胃ろうの管理、ストマ・尿カテーテル管理、創傷処置
– 気管カニューレ管理、中心静脈ポートのアクセスや静注など、地域・事業所体制により対応可能な処置の幅は異なる(医師の指示の下)
– 生活・衛生・安楽のケア
– 口腔ケア、清拭・保清、体位調整と褥瘡予防、保湿・スキンケア、排泄支援、栄養水分の取り方の助言、福祉用具(介護ベッド、マットレス、ポータブルトイレ、吸引器など)の選定支援
– 心理・社会的ケア
– 不安や恐怖、痛みへの心理的サポート、患者さんの価値観を尊重した意思決定支援(ACP)、スピリチュアルな苦痛への配慮
– ご家族の介護負担への助言、休息の取り方、感情の受け止め、グリーフ(死別)ケアの入口支援
– 家族教育と伴走
– 症状のサインの見極め方(浅い呼吸、下顎呼吸、チアノーゼ、尿量減少、意識レベルの変化など)
– 薬の使い方、緊急時の連絡・初期対応、体位・吸引・口腔ケアの仕方、看取り前後の流れ(死亡連絡~葬儀社手配~死亡届の手続き)を事前に共有
– 多職種連携と調整
– 主治医(在宅医/訪問診療)、ケアマネジャー、訪問介護、薬剤師、訪問リハ、歯科衛生士、栄養士、福祉用具、地域包括支援センター等と情報共有
– 必要時の往診依頼、薬の緊急手配、短期入院(レスパイト・症状緩和目的)の検討など、在宅療養の継続可否を含むコーディネート
– 24時間対応
– 電話相談の常時受付、症状悪化時の緊急訪問、夜間・早朝・深夜の駆けつけ(対応可否は事業所の体制に依存。

24時間対応体制加算の届出が目安)
– 死亡前後の支援
– 旅立ちの徴候が強まる最終段階の見守り、苦痛の最小化、宗教的・文化的配慮
– 逝去直後のエンゼルケア(清拭、更衣、整容、家族時間の確保)、主治医への連絡・死亡診断の手配、葬儀社や行政手続きの案内
– 死後のグリーフケアの窓口紹介

どこまで可能か(法制度上・実務上の線引き)

– 訪問看護ができる範囲
– 医師の訪問看護指示書に基づく医療処置と観察、苦痛緩和、療養上の世話、家族支援、連携・調整、緊急時の初期対応
– 特定行為研修を修了した看護師が在籍する事業所では、一定の高度処置(例 気管カニューレ交換などの一部)を包括的指示のもとで実施できる場合がある
– 訪問看護ができないこと・限界
– 診断・処方の決定・死亡診断書(死体検案書)の作成は医師のみ
– 大量出血・急速な呼吸不全・難治性症状の急変など、在宅で安全にコントロールできない場合は入院の検討が必要
– 長時間の常駐(泊まり込み)は制度上想定されない。

必要時は連続した訪問や多職種の組み合わせで対応
– 在宅輸血など高リスク処置は地域でも実施体制が限られる

利用までの流れ(実務)

– 初期相談
– 主治医・病院の退院支援部門・地域包括支援センター・ケアマネ・訪問看護ステーションに相談
– 「自宅で看取りたい」という意思を明確化し、家族の受け入れ体制や住環境を確認
– 体制づくり
– 退院前(または導入前)カンファレンス 主治医、訪問看護、ケアマネ等で役割分担と緊急時対応の取り決め
– 訪問看護指示書の発行、ケアプラン(介護保険の場合)の作成、訪問頻度・連絡方法の合意
– 福祉用具、在宅酸素、吸引器、必要薬剤(レスキュー薬を含む)の事前準備
– ACP(アドバンス・ケア・プランニング)で価値観・希望(痛みコントロールと意識のバランス、DNAR、最終的な場所の希望等)を共有
– 運用
– 定期訪問(最終期は高頻度、症状次第で連日・1日複数回も)+24時間の電話相談・緊急訪問
– 状態変化に応じて主治医が薬剤・指示内容を適宜調整

緊急時の対応例

– 呼吸困難 体位調整、酸素調整、口すぼめ呼吸の誘導、必要時の薬剤のレスキュー使用、医師への連絡
– 強い痛み レスキュー投与、非薬物的な鎮痛(温罨法、リラクセーション)、原因評価、医師と処方調整
– せん妄・不穏 環境調整、家族指導、危険回避、必要時の薬剤投与管理
– 出血 圧迫や局所処置、安楽確保、緊急連絡と搬送要否の判断支援

看取りの直前と直後の具体

– 直前 飲食量の低下、眠りがち、脈や呼吸の変化などの兆候を共有し、家族がやるべきこと・やらなくてよいことを明確化
– 直後 安置・清拭・整容、宗教的配慮、家族の時間確保、医師の死亡診断手配、葬儀社・死亡届の流れ説明、使用薬剤や医療機器の回収調整

費用と保険(概要)

– 介護保険と医療保険の使い分け
– 要介護認定がある方は原則介護保険で訪問看護を利用。

ただし末期がん等や医師が「特別訪問看護指示書」を発行した期間などは医療保険での算定が可能
– 末期がん等は医療保険での訪問看護が広く認められ、回数・時間の柔軟性が増す
– 加算・体制
– 24時間対応体制加算、緊急時訪問看護加算、ターミナルケアや看取りに関する加算など、終末期支援を評価する仕組みが診療報酬・介護報酬に存在
– 自己負担
– 保険種別に応じて1~3割負担。

高額療養費制度や限度額適用、介護保険の区分支給限度基準額などの枠組みを活用
– 具体額は状態・回数・時間帯・地域で差があるため、事前に事業所と見積もり・支払い方法を確認

質の担保と事業所選びのポイント

– 24時間対応の有無、緊急時の駆けつけ実績
– 緩和ケアや終末期ケアの経験、医療処置の対応範囲(吸引、持続皮下注、気切・胃ろう管理等)
– 特定行為研修修了看護師の在籍状況
– 多職種連携の体制(在宅療養支援診療所・薬局との連携)
– 家族支援やグリーフケアの姿勢、ACP支援の経験
– 夜間・休日の連絡方法、レスポンスの目安

在宅看取りの限界と入院移行を検討する場面

– 苦痛が在宅で十分にコントロールできない、頻回の大量出血、急速な窒息リスク、家族の心身負担や不安が限界、虐待や重大な安全上の懸念
– 緩和ケア病棟・在宅ホスピス的な受け皿との連携(短期入院やレスパイト)を柔軟に活用

よくある不安への短答

– 夜中に苦しくなったら?
→まず訪問看護へ電話。

状況評価後、電話指示での対応、緊急訪問、主治医の往診要請や救急搬送の判断を支援
– 強い痛みが怖い→レスキュー薬と投与ルールを事前に整え、家族が使える形に。

非薬物的手段も併用
– 意識が落ちても苦しまない?
→鎮静を含む強めの症状緩和も倫理的手続きを踏まえ選択肢。

医師が方針を示し、看護師が投与管理と観察で支える

実務での根拠・制度の拠り所

– 訪問看護の法的枠組み
– 訪問看護は保健師助産師看護師法および介護保険法・医療保険制度に基づく指定事業。

医師の「訪問看護指示書」に基づき医療処置・観察・療養支援を行う
– 死亡診断書(死体検案書)の作成は医師に限られる(関連法規による)。

看護師は死亡後ケアや手続き支援は可能だが、死亡診断そのものは医師が行う
– 看護師の「特定行為研修制度」により、包括的指示の下で一定の医行為を実施可能(厚生労働省が定める制度)
– 報酬・体制に関する根拠
– 診療報酬・介護報酬の算定要件に「24時間対応体制」「緊急時訪問」「ターミナルケア・看取り関連加算」「特別訪問看護指示書」などの規定があり、終末期の在宅支援を制度的に後押し
– 末期がん等では医療保険による訪問看護が広く適用され、回数・時間の緩和が認められる
– ケア内容の臨床的根拠
– 人生の最終段階における医療・ケアの意思決定プロセスに関するガイドライン(厚生労働省) ACPの重要性、多職種連携、患者・家族の価値観尊重
– 日本緩和医療学会等の各種ガイドライン 疼痛や呼吸困難、せん妄、消化器症状などの症状緩和、終末期鎮静に関する倫理的手順
– 厚生労働省や自治体の「訪問看護の手引き」「指定訪問看護の運営基準」等 訪問看護の業務範囲、記録、緊急時対応、連携

実践に役立つ準備チェック(例)

– 連絡体制 24時間の電話番号、主治医・訪看・ケアマネ・薬局・葬儀社の連絡先一覧
– 事前指示 ACPの記録、DNARの意思、看取り場所の希望
– 薬剤・物品 レスキュー薬(鎮痛・鎮吐・不安時など)、坐薬や皮下注薬、吸引器、口腔ケア用品、清拭用品、必要な福祉用具
– 環境 介護ベッド・マットレス、動線確保、照明と防寒、家族の休息スペース
– 家族教育 症状のサイン、薬の使い方、緊急時の判断、看取り直後の流れ

まとめ
訪問看護は、自宅看取りにおいて「苦痛を最小化し、望む場所で、望むかたちで生き切る」ことを支える実行部隊です。

症状緩和、生活支援、家族支援、24時間の見守り、多職種連携、死亡前後の実務支援までを包括的に担います。

一方で、診断・処方・死亡診断など医師に限られる行為や、在宅では安全性が担保できない事態には限界があり、入院や緩和ケア病棟との併用が必要な場面もあります。

制度上も、医療・介護保険の枠組みと各種加算によって終末期の在宅療養が後押しされているため、早めに体制を整えるほど選択肢は広がります。

参考・根拠の所在(入門ガイド)
– 厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの意思決定プロセスに関するガイドライン」
– 厚生労働省「訪問看護の手引き」「指定訪問看護の運営基準」「診療報酬・介護報酬(訪問看護関連)算定要件」
– 日本緩和医療学会 各種ガイドライン(疼痛、呼吸困難、せん妄、終末期鎮静 等)
– 在宅療養支援診療所・地域包括ケアに関する各種通知・解説資料

具体的な運用や費用、対応可能な医療処置は地域・事業所で差があります。

お住まいの地域の訪問看護ステーションや在宅医、ケアマネジャーに「自宅での看取りを希望している」ことを早めに伝え、退院前カンファレンスや見学・事前面談をぜひ設定してください。

必要であれば、事業所選びの比較ポイントや初回面談で確認すべき質問項目のリストもお作りします。

痛みや呼吸苦などの症状緩和はどのように行われるのか?

ご自宅での看取り(エンド・オブ・ライフケア)における訪問看護の症状緩和について、特に「痛み」と「呼吸困難(呼吸苦)」を中心に、実際にどのように行われるか、その根拠とともに詳しく解説します。

以下は日本の在宅医療・訪問看護の実態と主要ガイドラインに沿った内容です。

1) 訪問看護が担う基本方針と体制
– 包括的アセスメント 痛みや呼吸苦の強さ・質(NRS/顔面スケール、Borg/息切れNRS、呼吸困難観察スケールRDOSなど)、日内変動、誘因、合併症(便秘、せん妄、不安)、薬剤履歴と副作用、生活背景(活動度、介護力、希望)を継続的に評価します。

– チーム連携 主治医(在宅医)からの指示書に基づき、薬の処方・調整、注射や持続皮下注(CSCI)や在宅酸素(HOT)機器管理、薬剤師・ケアマネ・訪問介護・地域包括との連携を図ります。

夜間・緊急時のオンコール体制で「レスキュー(頓用)」投与など迅速に対応します。

– 予期的対応(anticipatory care) 症状の悪化に備え、あらかじめ必要薬(レスキューオピオイド、制吐薬、下剤、抗不穏薬、分泌抑制薬など)と投与手順を自宅に準備し、ご家族に使い方を具体的に指導します。

– 家族支援と教育 非薬物的ケア(体位、呼吸法、扇風機、リラクゼーション)、薬の使い分け、緊急時の連絡方法、死が近いサインの説明(呼吸パターン、意識変化、摂食低下、分泌音など)を丁寧に共有します。

2) 痛みの緩和(在宅での実際)
a. 薬物療法
– WHOがん疼痛ラダーに準拠 軽度はアセトアミノフェン/NSAIDs、中等度〜高度はオピオイド(モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル、ヒドロモルフォン等)に段階的に移行・併用。

神経障害性・骨転移・内臓痛など機序に応じてアジュバント(プレガバリン/ガバペンチン、デュロキセチン、アミトリプチリン、デキサメタゾンなど)を追加します。

– レスキュー投与 定期用量とは別に突発痛へ即効性製剤(内服液・速放製剤・皮下注)を準備。

用量は通常、1日の定期オピオイド総量の約1/6を目安に調整(医師の指示に基づく)。

– 投与経路の選択 内服が困難・吸収が不安定な場合は、経皮フェンタニルや持続皮下注(CSCI シリンジポンプ)を用います。

訪問看護は皮下留置針の管理、注入速度の観察、部位のローテーション、薬剤の安定性確認を行います。

– 副作用予防 オピオイド誘発便秘には予防的に下剤(酸化マグネシウム+センナ/ピコスルファート等、必要に応じてナルデメジン等)を併用。

悪心にはメトクロプラミド、ハロペリドール、オランザピン等を症状と機序に応じて選択。

眠気・せん妄は減量や薬剤変更、ハロペリドール等で対応。

– 腎機能低下時 モルヒネ代謝物の蓄積に注意。

フェンタニルやヒドロモルフォン等への切替を検討します。

b. 非薬物的介入
– 体位調整(痛みを誘発しない楽な姿勢、支持具の活用)
– 温罨法・冷罨法、ストレッチ、リラクゼーション、認知行動的アプローチ
– 生活動作のエネルギー節約法、睡眠・環境調整
– 家族へのタッチングや安心感の提供

3) 呼吸困難(呼吸苦)の緩和
a. 評価と原因別対応
– 低酸素血症、気道分泌過多、気道閉塞、心不全や胸水、貧血、不安・せん妄、疼痛増悪などを鑑別。

治療可能な因子(胸水穿刺、利尿、感染治療、気管支拡張薬、ステロイド等)が適切か医師と随時協議。

– 主観的苦悶の評価を重視し、非言語的サイン(呼吸数、使用筋、顔貌)も観察。

b. 薬物療法
– 低用量オピオイド モルヒネ等は呼吸努力や呼吸困難感の知覚を軽減。

内服可能なら少量から漸増、内服困難・急性増悪時は皮下注でレスキュー。

腎機能に応じフェンタニル等を選択。

訪問看護は効果と副作用(過度の鎮静、CO2貯留の兆候)を慎重にモニタリング。

– 抗不安薬(ベンゾジアゼピン) オピオイドで不十分な不安随伴の呼吸困難に併用(例 ロラゼパム頓用、持続皮下注ではミダゾラムを少量から)。

単剤で息苦しさ自体を強く和らげる根拠は限定的ですが、不安・パニックの緩和には有用。

– 酸素療法 SpO2/動脈血ガスで低酸素血症がある場合は在宅酸素(HOT)を適応。

低酸素がない場合はルーチン酸素投与の有効性は限定的で、冷風(扇風機)などが同等以上に有効とのエビデンス。

訪問看護はHOT機器の安全管理・加湿・皮膚トラブル予防を支援。

– 気道分泌・咳嗽 去痰困難や「死前喘鳴」には体位調整、口腔ケア、必要に応じて抗コリン薬(臭化ブチルスコポラミン、グリコピロニウム等)を頓用。

深部の吸引は刺激でかえって分泌を増やすため慎重。

浅い口腔内ケア中心。

– 原因別の追加治療 COPD/喘息増悪には吸入気管支拡張薬、ステロイド短期投与。

心不全・胸水には利尿・穿刺。

腫瘍性気道狭窄にはステロイド・ネブライザー等で症状緩和を図る。

c. 非薬物的介入
– 体位 上体挙上、前屈位、枕を使った三点支持、開窓・換気
– 呼吸法 口すぼめ呼吸、腹式呼吸の指導
– 扇風機や冷風 三叉神経刺激による呼吸困難感の低減がランダム化試験で示唆
– 活動の分節化・ペーシング、入浴や排泄時の負担軽減の工夫
– 環境調整と安心感の提供(暗さ・静寂・同伴者)

4) 終末期特有の症状と看取り前後の支援
– 不穏・せん妄 原因(尿閉、便秘、薬剤、感染、疼痛)を評価し是正。

ハロペリドールやレボメプロマジン等で薬物療法。

環境調整と家族の安心づくりが重要。

– 嘔気・嘔吐 原因(オピオイド、便秘、腸閉塞、頭蓋内圧亢進、代謝異常)に応じ、メトクロプラミド、ハロペリドール、オランザピン、デキサメタゾン等を使い分け。

– 便秘・口渇・皮膚トラブル 予防的ケア(下剤、口腔ケア、保湿、褥瘡予防)を継続。

– 死前喘鳴 体位を整え静かな環境を保つ。

抗コリン薬の反応を見ながら最小限の介入で家族へ説明・安心を提供。

– 看取りの瞬間とグリーフケア 訪問看護は家族に身体変化の意味を伝え、過度の医療化を避けつつ尊厳ある看取りを支援。

死亡確認の流れ、麻薬類の回収・廃棄、葬送の実務、遺族ケアへ橋渡し。

5) 難治症状に対する持続鎮静(Palliative Sedation)
– 適応 適切な治療を尽くしても制御不能な苦痛(難治性の呼吸困難、難治性疼痛、せん妄など)。

目標は「苦痛の軽減」であり、生命短縮を目的としない。

– 手順 医師が適応判断と説明・同意取得(患者の意思・家族の理解、記録)。

鎮静の目標深度・再評価計画を明確化。

訪問看護はミダゾラム等の持続皮下注・間欠投与の管理、鎮静深度(RASS等)とバイタル・苦痛サインの観察、家族支援を行う。

– 薬剤 ミダゾラムを第一選択とすることが一般的。

状況によりレボメプロマジンやプロポフォール(在宅では稀)等。

併用薬(オピオイド、抗精神病薬)を適宜整理。

6) 訪問看護が実際に行う手技・連携
– 医師の指示書に基づく 注射投与、持続皮下注・静注(シリンジポンプ)、在宅酸素・吸入・ネブライザー、皮下留置針の管理、創傷・褥瘡ケア、尿道カテーテル、胃瘻・在宅点滴の管理など。

– 特定行為研修修了看護師の活用 包括的指示のもとで持続投与の用量微調整、呼吸器関連の観察・介入を機動的に実施可能(事業所体制による)。

– 薬剤・機器のロジスティクス 麻薬の保管・カウント、廃棄、注射器具や皮下針の交換周期、HOTや吸引器の安全確認。

– 24時間対応 夜間の疼痛・呼吸苦悪化時、レスキュー投与や注入速度調整、医師への報告・指示受け、必要時の臨時訪問で不安の緩和と症状制御を図る。

7) 根拠(ガイドライン・研究)
– WHOがん疼痛ラダー 段階的薬物療法(非オピオイド→弱オピオイド→強オピオイド)、定時投与+レスキュー、個別化の原則を提示。

オピオイドは強いがん疼痛に有効で、適切な用量調整と副作用対策を伴えば在宅でも安全に用い得る。

– 日本緩和医療学会(JSPM)「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン」 薬剤選択・投与経路・レスキュー設計・副作用対策(便秘、悪心、眠気、せん妄など)を詳細に推奨。

在宅での持続皮下注の有用性、腎機能別のオピオイド選択にも言及。

– 呼吸困難に関する指針(JSPM/NICE/EAPC/ATS等の合意) 低用量オピオイドが慢性・進行期の呼吸困難感を有意に軽減することを支持。

ベンゾジアゼピンは不安の強い患者に補助的に用いる選択肢。

低酸素がない例では routine酸素投与の利益は限定的で、扇風機の冷風や非薬物的介入が推奨される。

– Cochraneレビュー(呼吸困難) オピオイドが呼吸困難の主観的スコアを低下させるエビデンス。

ベンゾジアゼピン単剤の効果は一貫せず、オピオイド併用下の不安軽減に位置づく。

– 扇風機(ハンドヘルドファン) 小規模ランダム化試験で顔面への気流が呼吸困難感を軽減する効果を示唆。

副作用が少なく在宅で実施容易。

– 死前喘鳴(終末期分泌音) 抗コリン薬の効果は限定的との系統的レビューがある一方、臨床的に有用とする報告も多く、まず体位・環境調整、必要時に薬物を試行する実践が一般的。

– 日本緩和医療学会「苦痛緩和のための鎮静に関するガイドライン」 適応、説明・同意、目標設定、ミダゾラム等の使い方、在宅での実施要件を明確化。

鎮静は生命短縮を目的とせず、倫理的配慮と継続的再評価が不可欠とする。

– 日本呼吸器学会 在宅酸素療法(HOT)ガイドライン 低酸素血症に対する酸素投与の適応、目標SpO2、機器管理、安全対策。

非低酸素例へのルーチン酸素は推奨しない立場が国際的勧告と整合。

– NICE「終末期成人人のケア(Care of dying adults)」やEAPC推奨 在宅終末期での疼痛・呼吸困難・不穏・分泌など主要症状の標準的管理、レスキュー薬の予期的処方、家族教育の重要性を提言。

– 日本の行政・学会資料(厚生労働省の訪問看護ガイド、在宅緩和ケアの手引き等) 訪問看護の役割、医師の指示書に基づく医療行為、24時間対応、チーム連携、看取りの手順等を明文化。

8) 実践上のポイント(まとめ)
– 痛み WHOラダーに基づく段階的薬物療法+副作用予防。

内服困難時は経皮・皮下注へ。

レスキューは事前に準備し家族が適切に使えるよう指導。

– 呼吸困難 少量オピオイドを軸に、不安にはベンゾジアゼピン補助。

低酸素がなければまず扇風機・体位・呼吸法。

分泌は体位・口腔ケア+必要時抗コリン薬。

原因特異的治療を同時並行。

– 予期的準備 終末期に起こり得る症状セット(疼痛、呼吸苦、不穏、嘔気、分泌、便秘)への薬剤・手順を早めに準備。

– コミュニケーション 患者・家族の価値観と希望(痛みゼロを目指すか、覚醒を保つか等)を共有し、目標に合わせて薬剤調整。

– 難治症状 適応を満たせば持続鎮静を検討。

倫理的手順と丁寧な説明のもと、訪問看護が連続的に支える。

注意事項
– ここに記した薬剤や手順は一般的原則であり、個々の患者さんの病態や併存症、現在の薬剤、腎肝機能、生活状況によって最適解は異なります。

具体的な用量・配合・投与経路の決定と変更は必ず主治医の処方・訪問看護のアセスメントに基づいて行ってください。

– 在宅での麻薬管理は法令遵守と安全対策(施錠保管、在庫管理、廃棄手順)が必要です。

訪問看護師・薬剤師がサポートします。

もし具体的な状況(基礎疾患、現在の症状、使用中の薬、在宅酸素の有無、家族の支援体制など)を教えていただければ、医療者に相談する際の準備事項や質問リスト、在宅で整えるべき物品・レスキュー薬の例などを、より実践的に整理してお伝えできます。

【要約】
呼吸困難時は、体位調整(端座位・ファーラー位・枕で上半身挙上)で負担軽減。口すぼめ呼吸や扇風機、在宅酸素の調整、痰が多ければ吸引・加湿。医師指示下でオピオイドや抗不安薬等のレスキューを使用。夜間含む緊急訪問・電話対応で家族を支援。不穏・不安には声かけと環境調整(室温・換気)、口腔ケア。少量の水分。必要時は往診や短期入院も調整。家族へ初期対応手順を事前共有。DNAR等の意思を確認し尊重。疼痛併発なら鎮痛も。