退院後すぐに必要となる支援は何で、訪問看護は何をどこまで担ってくれるのか?
ご質問のポイントは、退院直後に実際に何が必要になるのか、そして訪問看護はどこまで担ってくれるのか、という2点だと思います。
以下では、退院前から退院後の時系列での支援の全体像、訪問看護が提供できる支援内容と限界、多職種連携や費用・利用までの流れ、最後に制度上の根拠をまとめてお伝えします。
1) 退院後すぐに必要となる支援(時系列の全体像)
– 退院前(できれば1~2週間前)から
– 退院前カンファレンスへの参加(主治医・病棟看護師・リハ職・医療ソーシャルワーカー、訪問看護、ケアマネジャー等)。
在宅で必要な医療処置、観察ポイント、緊急時の連絡体制、訪問回数の目安を決め、在宅療養計画書(ケアプラン)と訪問看護計画の素案を作ります。
– 住宅環境と福祉用具の準備(ベッド、手すり、段差解消、ポータブルトイレ等)。
必要に応じて住宅改修の申請。
– 在宅で使う医療機器・物品の手配(在宅酸素、吸引器、経管栄養セット、創傷ケア資材など)。
– 服薬計画の整理(お薬カレンダー、1包化の検討、訪問薬剤師の導入可否)。
– 家族・介護者への事前トレーニング(吸引・経管栄養・体位変換などが必要な場合)。
退院当日~72時間(最優先で整えること)
バイタルサインと症状の変化の確認、退院処方薬の確認・仕分け(重複・飲み忘れの防止)。
医師の訪問看護指示書に基づく初回アセスメント(疾患ごとの再燃サイン、転倒・誤嚥・褥瘡リスク、感染兆候、痛み、認知機能、家族の介護負担など)。
緊急連絡先の一本化(24時間連絡体制の有無、救急要請の判断基準、夜間・休日の対応方法)。
生活動線の確認と即応の調整(ベッド周り、トイレ・浴室の安全、呼び出しベル等の配置)。
外来受診・検査のスケジュール確認、在宅医(訪問診療)導入の要否判断。
退院後1~2週間
症状の安定化と再入院リスクの低減(心不全なら体重・浮腫・呼吸、呼吸器疾患ならSpO2・痰量、糖尿病なら血糖、創傷なら滲出液・感染兆候などのモニタリング)。
医療処置の定着(創傷ケア、カテーテル管理、経管栄養、吸引、インスリン注射、疼痛管理等)。
服薬アドヒアランスの確認と副作用チェック。
必要に応じて処方医へ情報提供。
介護者の手技習得の伴走(安全な移乗、体位変換、口腔ケア、排泄介助など)。
退院後1~3か月
生活の再構築(活動量の段階的拡大、食事・栄養の最適化、睡眠と昼夜リズム、社会参加)。
リハビリ目標の見直し(ADL/IADLの改善指標で評価)。
長期的な療養計画・ACP(将来の医療とケアの希望)整備、看取りの意向があれば在宅での体制を具体化。
2) 訪問看護は何をどこまで担ってくれるのか(できること/できないこと)
– 医療的ケア(医師の指示の範囲)
– 創傷管理(褥瘡・術創)、ドレーン・ストーマケア、留置カテーテル交換・管理、胃ろう・経管栄養、中心静脈栄養の管理、在宅酸素・吸入・吸引、気管カニューレの管理、血糖測定・インスリン調整、疼痛評価とオピオイドの安全使用支援、感染徴候の早期発見と受診調整。
– 終末期・緩和ケア(痛み・息苦しさ・不安への介入、在宅看取りの準備と当日の支援)。
– 精神科訪問看護(再発サインの把握、服薬支援、ストレス対処、家族支援)。
– 小児訪問看護(発達段階を踏まえたケア、医療機器管理、きょうだい・保護者支援)。
観察・評価・再発予防
バイタル・症状の継続的モニタリング、リスクアセスメント、在宅での自己管理指導(体重・SpO2・排便・水分・疼痛スコア等の記録と活用)。
悪化時の早期介入(特別訪問看護指示書がある場合は頻回訪問が可能)。
服薬管理・療養指導
薬の整理、飲み方の工夫、副作用チェック、処方医・薬剤師へのフィードバック。
栄養・嚥下・口腔ケア指導、睡眠・活動量の調整、疾病別セルフケア(心不全・COPD・糖尿病など)。
介護者・家族支援
介護手技のコーチング、介護負担の評価、レスパイト提案、心理的サポート、福祉制度の案内。
リハビリテーション
看護師による日常生活動作(ADL)中心の機能訓練。
ステーションに理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が在籍していれば専門的訪問リハの提供も可能(サービス類型は事業所により異なる)。
多職種連携・調整
主治医(訪問診療含む)への定期報告書・緊急連絡、ケアマネジャーや地域包括支援センターとの連携、訪問薬剤師・歯科(口腔ケア)・管理栄養士・福祉用具事業者・訪問介護・訪問入浴・デイサービス等の調整、サービス担当者会議の開催・参加。
緊急時対応と24時間体制
24時間連絡体制を持つ事業所では、夜間・休日の電話相談や必要時の緊急訪問が可能(契約と体制に依存、別途料金加算あり)。
救急要請や入院が必要と判断した場合の搬送調整も担います。
法制度上・専門性上の限界
診断や処方は不可(主治医の指示が必須)。
医療行為は医師の指示書の範囲で実施。
家事代行・買い物・長時間の付き添い等は原則訪問看護の範囲外(必要なら訪問介護や生活支援サービスを併用)。
頻回訪問や24時間対応は、事業所の体制と保険の算定要件に依存(常時マンツーマンの見守りは不可)。
特定行為(脱水に対する輸液量調整など)は、所定の研修を修了し、医師の包括的指示体制が整った看護師のみが実施可能。
3) 利用開始までの流れと費用の目安
– 窓口
– 入院中 病院の地域医療連携室(医療ソーシャルワーカー)・退院支援看護師に相談。
– 在宅 地域包括支援センター、かかりつけ医、既に担当のケアマネジャー。
– 手続き
– 医師が訪問看護指示書を発行。
要介護認定がある場合はケアマネがケアプランを作成。
– 訪問看護ステーションと契約、初回訪問でアセスメント→訪問看護計画書・報告書の作成。
– 回数・時間
– 1回あたり20~90分程度が一般的。
週1~3回が多いが、状態により増減。
急性増悪や退院直後は「特別訪問看護指示書」により14日間の頻回訪問が可能。
– 費用
– 介護保険・医療保険のいずれか(原則は介護保険優先)。
自己負担は1~3割。
高額療養費・高額介護サービス費・公費負担(難病・小児慢性、障害医療、重度心身障害者医療等)の適用で負担軽減が可能。
– 24時間対応や緊急時訪問、ターミナルケア、特別管理などは加算がつく場合あり(事業所・地域差あり)。
4) 典型的なケース別の「退院直後に必要なこと」の例
– 心不全・COPD等の呼吸循環器
– 毎日の体重・SpO2・浮腫・呼吸困難の評価、利尿薬や在宅酸素の適正使用指導、塩分・水分管理、早期受診の基準共有。
– 脳卒中後
– 嚥下・誤嚥予防、体位変換・移乗訓練、肩亜脱臼・拘縮予防、服薬管理、口腔ケアと栄養調整。
– 術後・創傷
– 創部の観察とドレッシング、疼痛管理、感染兆候の早期発見。
– がんの緩和・終末期
– 痛み・呼吸困難・せん妄・悪心のコントロール、家族の不安軽減、在宅看取りの段取り(当直連絡体制、薬剤の備え)。
– 認知症・精神疾患
– 服薬アドヒアランス、昼夜逆転への介入、徘徊リスク対策、家族への心理教育、デイ等の社会資源活用。
5) 連携して使うと効果的なサービス
– 訪問診療(在宅医)、訪問薬剤管理指導(薬剤師)、訪問歯科・歯科衛生士、管理栄養士の栄養指導、訪問介護(身体介護・生活援助)、訪問入浴、通所リハ・デイサービス、福祉用具貸与・住宅改修、地域包括支援センターの相談支援。
訪問看護はこれらのハブとして調整役を担います。
6) 迷ったときの実務的チェックリスト(退院前に最低限確認)
– 訪問看護ステーションは決まっているか、初回訪問日と時間は?
– 医師の訪問看護指示書は発行されるか、特別訪問看護指示書の要否は?
– 夜間・休日の連絡先と判断基準(いつ電話/救急要請するか)は?
– 薬の飲み方、危険な組合せ、副作用時の対応は?
– 医療機器・物品は退院までに届くか、家族の手技は安全レベルか?
– 次回外来・検査の予定、在宅医の導入要否は?
– ケアマネのケアプラン、他サービス(ヘルパー等)の開始日程は?
7) 制度・運用上の根拠(主なものの要点)
– 医師の指示に基づく提供
– 訪問看護は、医師の交付する訪問看護指示書に基づき提供(診療報酬・介護報酬の算定要件)。
退院直後や症状変化時には「特別訪問看護指示書」により14日間の頻回訪問が可能(厚生労働省通知・診療報酬点数表関連通知)。
– 介護保険優先の原則と例外
– 要介護認定がある場合は原則介護保険で訪問看護を利用。
ただし、末期がん・小児・難病等「厚生労働大臣が定める疾病等」や精神科訪問看護、特別訪問看護指示書発出時など、医療保険が適用される場合がある(介護保険法および関連通知、健康保険法の訪問看護療養費の支給対象に関する告示等)。
– 在宅療養計画書・訪問看護計画書・報告書
– 訪問看護ステーションは、アセスメントに基づき計画書を作成し、主治医へ定期的に報告する義務(介護報酬・診療報酬の算定基準)。
– 24時間連絡体制・緊急時訪問
– 24時間対応体制を整備し、緊急時訪問を行う場合には所定の加算が認められる(診療報酬・介護報酬の加算要件)。
– 特定行為研修修了看護師の業務
– 所定の研修と手順書に基づき、一定の高度な医療行為を実施可能(保健師助産師看護師法、特定行為研修制度)。
– 退院支援・地域連携
– 医療機関には退院支援・地域連携の評価(退院支援加算、退院時共同指導等)が設けられ、在宅移行のための連携が制度上位置づけられている(診療報酬)。
参考となる公的資料(名称のみ)
– 厚生労働省 診療報酬点数表・通知(訪問看護療養費、特別訪問看護指示書、24時間対応体制等)
– 厚生労働省 介護報酬の算定構造(居宅サービス 訪問看護、各種加算)
– 介護保険法・健康保険法関係告示(訪問看護に係る医療保険・介護保険の適用関係)
– 日本看護協会/日本訪問看護財団 訪問看護の手引き・ガイドライン
– 厚生労働省 退院支援に関する手引き・地域包括ケア関連資料
最後に
訪問看護は「医療」と「生活」をつなぐ在宅療養の要です。
退院直後は、再入院リスクを下げるための観察と調整、介護者の不安を減らす教育と支援が特に重要です。
ただし、頻回訪問や24時間対応の具体的な可否、費用負担、他サービスとの組み合わせは、地域や事業所の体制・保険種別・主治医の指示内容で変わります。
退院前に、病院の地域連携室・退院支援看護師、希望する訪問看護ステーション、ケアマネジャーと「誰が何をいつまでにするか」を書面で共有しておくと、スムーズに在宅へ移行できます。
必要であれば、お住まいの地域や疾患状況に合わせた具体的な初期プランの叩き台も作成しますので、年齢・疾患・生活環境(同居家族の有無、住居階段の有無など)を教えてください。
訪問頻度やケア内容はどのように決まり、退院時カンファレンスの計画とどう連動するのか?
ご質問の要点は、退院後の訪問看護が「どのような根拠と手順で訪問頻度やケア内容を決めるのか」と「退院時カンファレンス(退院前カンファ)とどう連動するのか」です。
日本の制度と現場の実務に沿って、流れ・判断基準・書類・関係者・根拠まで、できるだけ具体的に整理します。
1) 訪問頻度・ケア内容が決まる基本の仕組み
– 出発点は主治医の指示書
– 訪問看護は原則として「医師(または歯科医師)の指示に基づく」医療専門職の業務です。
入院中の主治医または退院後の在宅主治医が「訪問看護指示書」を発行し、その内容(目的、必要な医療処置、観察項目、注意点)をコアに計画を作ります。
– 病状の急性増悪や術後直後など一定条件では「特別(緊急)訪問看護指示書」が発行され、原則14日以内の集中的・頻回訪問(毎日レベルを含む)が可能になります。
退院直後の不安定期によく使われます。
介護保険のケアプラン(該当者)との整合
65歳以上や要介護認定者などは介護保険の枠組みで訪問看護を位置づけます。
ケアマネジャーが「居宅サービス計画(ケアプラン)」を作成し、訪問看護はその一部として目的・頻度・他サービスとの役割分担を明確化します。
介護保険の被保険者であっても、特定の医療的状態や特別指示期間など「医療保険優先」が認められるケースがあり、主治医の指示と診療報酬の要件に従って医療保険での訪問看護を行います。
訪問看護ステーションのアセスメント
退院前後に訪問看護師が「初回アセスメント」を実施し、以下を多面的に評価します。
1) 医療的必要性(病状安定度、急変リスク、必要な医療処置 酸素、吸引、点滴、創傷ケア、カテーテル管理、疼痛コントロール等)
2) 生活機能(ADL/IADL、嚥下・栄養、排泄、睡眠、転倒・褥瘡リスク)
3) セルフケア能力と家族・介護者の支援力(技術習得状況、介護負担、同居/独居)
4) 住環境(段差・手すり・ベッド配置、福祉用具の適合)
5) 社会資源の活用状況(デイ、訪問リハ、ヘルパー、訪問診療、薬剤師、栄養士、MSW等)
6) 緊急時対応体制(連絡先、24時間対応契約、救急時の希望)
これらを基に「訪問看護計画書」を作成し、訪問頻度・時間・担当職種(看護師・保健師・PT/OT/ST等)・具体的ケア内容・目標・評価時期を定めます。
標準的な頻度の目安(実務上の考え方)
高リスク・不安定期(退院直後、術後、急性増悪直後、複数の医療処置あり、家族未習熟)
→ 週3回~毎日(特別指示期間を含む)。
電話フォロー+24時間対応で安全網を敷く。
1~2週ごと再評価。
中等度リスク(病状は概ね安定だが、処置や服薬管理に注意が必要)
→ 週1~2回。
目標達成に応じて減頻度化。
低リスク・安定期(自己・家族管理が確立)
→ 2週に1回~月1回のモニタリング中心。
状況変化で増頻度化に備える。
リハビリは目標と負荷に応じて週1~3回から開始し、家庭内での自主訓練に移行。
ケア内容の具体例
病状観察(バイタル、症状、浮腫・呼吸・痛み・栄養状態)
医療処置(創傷管理、浣腸・摘便、吸引、酸素、胃瘻・経管栄養、点滴、留置カテーテル管理、褥瘡ケア、ストマケア等)
服薬管理(セット化、相互作用のリスク確認、残薬調整、服薬アドヒアランス支援)
療養・生活指導(食事・排泄・睡眠、再入院予防のサイン教育、自己測定の方法)
リハビリ(関節可動域、筋力、嚥下、生活動作訓練、福祉用具の適合)
精神・心理的支援、認知症・せん妄予防、家族介護者支援(手技トレーニング、レスパイト提案)
社会資源の調整(デイ・ヘルパー・通所/訪問リハ、訪問診療、薬剤管理指導、栄養・口腔管理、住宅改修)
看取りケア(疼痛・症状緩和、意思決定支援、ACP、グリーフケア)
2) 退院時カンファレンスと連動する実際の流れ
– 入院早期(目安 入院直後~1週間以内)
– 病院の退院支援部門(地域連携室・退院調整看護師)がスクリーニング。
在宅移行の課題(医療処置の有無、家族状況、住環境)を抽出。
– 訪問看護の必要性が見込まれる場合は、早期に候補の訪問看護ステーションへ情報提供・打診。
退院前自宅評価・家族トレーニング(退院1~2週間前)
訪問看護師が可能なら自宅を事前訪問し、動線や段差、ベッド配置、バリアフリー、福祉用具(ベッド、手すり、ポータブルトイレ、スロープ等)を評価。
家族へ医療手技の指導(吸引、栄養、創部ケア等)を病棟と協働で実施。
必要に応じて試験外泊で安全性を検証。
退院時カンファレンス(退院1週間前目安)
参加者 患者・家族、主治医、病棟看護師、退院支援看護師/MSW、リハ、薬剤師、栄養士、ケアマネ、訪問看護管理者・担当看護師、(必要に応じ)訪問診療医、福祉用具専門相談員 等。
共有・決定事項
1) 退院基準(在宅での安全ライン)と到達状況
2) 在宅療養のゴール(再入院予防、ADL維持/改善、症状緩和、最期の迎え方など)
3) 必要サービスと役割分担(訪問看護、訪問診療、ヘルパー、デイ、訪問リハ、薬剤師、栄養士)
4) 医療機器・物品の手配(酸素、吸引器、栄養ポンプ、創傷用品等)
5) 退院直後の頻回フォロー計画(特別指示の要否、初回訪問日時、24時間対応契約、緊急連絡先)
6) 情報連携方法(退院サマリ、訪問看護指示書、服薬情報、リハサマリ、連携パス、ICT共有の可否)
ここで合意された内容を、医師指示書・ケアプラン・訪問看護計画書に落とし込みます。
退院当日~48/72時間以内
初回訪問で環境・処置・服薬・疼痛・リスクを再確認。
緊急連絡網の再周知。
必要に応じて主治医へ状況報告と指示調整。
退院後1~2週間
頻回訪問期として状態安定化を図り、家族・本人の自己管理力を引き上げる。
必要ならミニカンファやサービス担当者会議を開催し、頻度や内容を見直し。
退院後1か月
評価会(サービス担当者会議等)で、目標進捗・再入院リスクの変化・頻度の増減・他職種の追加/卒業を再設計。
3) 判断の具体ロジック(実務の目安)
– 医療的必要度
– 複数の侵襲的デバイス管理(胃瘻・CVポート・尿道カテーテル・在宅酸素等)が重なるほど頻度は上がる。
– 病態(心不全、COPD、がん終末期、認知症のBPSD、糖尿病のコントロール不良、褥瘡リスク等)に応じ、観察・指導・処置の比率を調整。
セルフケア/家族介護力
技術習得前は同行・反復指導を厚めに。
達成後は減頻度化し電話フォローへ。
生活機能・転倒/褥瘡リスク
ADL低下やサルコペニアが強ければ、リハの密度を高め、看護はモニタリングと合併症予防に重点。
退院直後の「特別指示」活用
退院直後14日間の特別指示で毎日~隔日訪問を組み、急変兆候の早期拾い上げと再受診ハブを担う。
その後は週2→週1→隔週と段階的に減らすのが一般的です。
4) 書類・連携のポイント
– 病院側
– 退院要約(病名、手術・治療経過、合併症、指導事項、退院時内服・物品、注意点)
– 訪問看護指示書(目的、処置、観察、緊急時対応、特別指示の有無)
– リハ・栄養・薬剤サマリ、地域連携パス
在宅側
訪問看護計画書・報告書(主治医・ケアマネへ定期報告)
介護保険のケアプラン(サービス担当者会議の議事)
24時間対応契約、緊急時対応マニュアル
必要に応じてACP/意思決定支援の記録
5) 典型ケースの頻度例(あくまで目安)
– 心不全増悪で入院→退院
– 退院直後2週間 看護 週2~3+電話フォロー、食塩/水分/体重/症状教育、服薬管理、早期受診トリガー設定。
訪問リハ 週1~2。
– 安定後 看護 週1→隔週。
増悪兆候で一時的に増頻度化。
脳卒中後片麻痺(嚥下リスクあり)
退院直後1か月 看護 週1~2(誤嚥・褥瘡・服薬・家族支援)、ST/OT/PT 週2~3で機能訓練・嚥下訓練。
安定後 看護 隔週~月1、リハは目標到達度で漸減。
がん終末期(在宅看取り希望)
特別指示下で必要時連日訪問+24時間対応。
疼痛・症状緩和の迅速調整、家族支援、ACPの再確認。
症状変動に応じて日中・夜間の臨時訪問を機動的に実施。
6) 根拠(制度・ガイドラインの位置づけ)
– 法制度・報酬の枠組み
– 訪問看護は看護職が医師等の指示に基づき在宅で療養上の世話・診療の補助を行う業務であり、指示書に基づくことが制度上の根拠です(医師法・保健師助産師看護師法の趣旨、厚生労働省通知)。
– 医療保険(診療報酬)および介護保険(介護報酬)において、訪問看護の算定要件・対象・頻回訪問が可能な特別指示の仕組み・24時間対応体制・緊急時訪問等が規定されています。
退院時の多職種連携(退院時共同指導、退院支援加算、地域連携パス等)の評価も診療報酬上整備されています。
– 介護保険では、要介護者は原則として介護保険優先で訪問看護を位置づけ、ケアマネによる居宅サービス計画に基づき提供します。
ただし厚労省が定める疾患・状態や特別指示期間などでは医療保険の適用が可能です。
実務ガイド・標準
厚生労働省「訪問看護の手引き」「在宅医療・介護連携推進事業」の各種資料、診療報酬・介護報酬の算定要件通知、地域包括ケアシステム関連通知などに、退院支援の早期介入、退院時カンファレンス、多職種連携、情報共有、在宅移行時の安全確保が位置づけられています。
日本看護協会・日本訪問看護財団などのガイドライン・研修テキストでは、退院直後の頻回フォロー、家族教育、段階的減頻度化、緊急時の連絡体制整備がベストプラクティスとして示されています。
実地に即したエビデンスの方向性
退院直後の集中的支援と多職種連携は再入院率低下、患者満足度・QOL向上に資するという国内外の研究・実践報告が蓄積しています(心不全、COPD、脳卒中、がん緩和ケアなどの領域で顕著)。
これに合致する形で診療報酬・介護報酬は在宅移行時の連携・支援を評価しています。
7) 実務のヒントと注意
– 退院日までに「初回訪問日時」「特別指示の有無」「24時間対応契約」「緊急連絡先」を確定し、患者・家族に紙で渡す。
– 服薬情報は“単なる処方せん”ではなく、服薬スケジュール、変更点、禁忌、残薬、服薬支援デバイスまで具体化。
可能なら地域の薬剤師と連携。
– 自宅環境は“訪問看護が入れるスペース”も確保(ベッド周囲、物品置き場、清潔・不潔ゾーニング)。
– 退院後1~2週間は計画の修正が多い前提で柔軟に。
小さな変化(食欲低下、夜間せき込み、体重増加、ふらつき)を早期に拾う観察項目を患者・家族にも共有。
– 自治体や審査支払機関の運用差や年度の報酬改定で要件が変わるため、最新の算定要件・通知はステーション管理者や地域連携室、ケアマネと必ず擦り合わせる。
まとめ
– 訪問頻度・ケア内容は、主治医の指示書とケアマネのケアプランを軸に、訪問看護の初回アセスメントで医療的必要度・生活機能・家族力・住環境・緊急対応体制を総合評価して決まります。
– 退院時カンファレンスでは、在宅での目標、役割分担、初回訪問や特別指示、24時間対応、情報共有の方法までを多職種で合意し、それを計画と指示書・プラン・パスに落とし込むことで、退院後の訪問計画に直結します。
– 根拠は、医師の指示に基づく訪問看護の制度的位置づけ、診療報酬・介護報酬の算定要件(特別指示や24時間体制、退院時連携の評価)、介護保険のケアプラン運用、厚労省や専門団体のガイドにあります。
個別の状況で最適解は変わります。
退院予定が見えた段階で早めに訪問看護ステーションと病院の地域連携室・ケアマネに相談し、「誰が・いつ・何を・どのくらいの頻度で・緊急時はどうするか」を、書面と連絡体制で具体化しておくことが、安心・安全な在宅移行の鍵になります。
主治医・ケアマネジャー・リハ職との連携体制はどう機能し、情報共有はどのように行われるのか?
以下は、日本の訪問看護を前提に、退院後の生活を支えるための主治医・ケアマネジャー・リハ職(PT/OT/ST)との連携がどう機能し、どのように情報共有されるのかを、制度の根拠を交えながら具体的に解説したものです。
地域や事業所によって運用は多少異なりますが、全国で概ね共通する枠組みです。
役割分担の基本
– 主治医(在宅医・外来主治医)
– 医学的責任者。
訪問看護指示書の発行、診断・治療方針の決定、急変時の医療判断、必要に応じ往診・訪問診療を行う。
– ケアマネジャー(介護支援専門員)
– 生活全体のマネジメント。
アセスメントに基づくケアプラン作成・見直し、サービス担当者会議の開催、各職種間の調整・モニタリング。
– 訪問看護(看護師・必要により理学/作業/言語療法士を含む)
– 病状観察、医療処置、服薬管理、療養生活支援、家族支援、急変時初期対応。
主治医の指示に基づく医療的ケアと、ケアマネのケアプランに基づく生活支援を橋渡しする。
– リハ職(PT/OT/ST 訪問看護ステーション所属のリハ、または訪問リハ事業所)
– 心身機能・活動・参加の評価、目標設定、在宅での機能訓練、動作指導、福祉用具・住宅改修の助言、家族・介護者への指導。
看護・主治医・ケアマネと目標を共有し、実践に落とし込む。
連携が機能するプロセス(退院前から退院後までの流れ)
(1) 退院前支援・情報収集
– 病院の退院支援部門(退院支援看護師・医療ソーシャルワーカー)が中心となり、在宅側(訪問看護、ケアマネ、必要に応じ在宅医・訪問リハ)と退院前カンファレンスを実施。
– 自宅環境・介護力・医療機器の必要性・服薬内容・リハの到達目標と在宅での継続点をすり合わせる。
– 根拠 退院時共同指導や退院支援加算等の算定要件、地域包括ケアの推進施策(厚生労働省の各種通知・診療報酬/介護報酬)。
(2) 退院当日までの準備
– 主治医が訪問看護指示書を作成(期間、頻度、医療処置の内容、緊急時対応方針等を明記)。
急性増悪が想定される場合は特別訪問看護指示書(14日以内の集中的訪問)を活用。
– ケアマネがケアプラン(居宅サービス計画)を確定し、ヘルパー、通所、福祉用具、訪問リハ等と調整。
サービス担当者会議を開催することが多い。
– 医療機器(在宅酸素、吸引器、経管栄養、ポンプ等)や衛生材料の手配、家屋改修・福祉用具の選定を事前に実施。
– 根拠 訪問看護は「主治医の指示に基づく」が法令(省令の運営基準)で求められる。
ケアマネはケアプランに基づくサービス担当者会議の開催義務が運営基準で規定。
(3) 退院直後〜初回訪問
– 訪問看護が初回訪問で包括的アセスメント(バイタル、症状、創部、栄養・嚥下、排泄、服薬、認知・精神状態、家族負担、住環境、転倒リスク等)を実施。
– 訪問看護計画書を作成し、本人・家族の同意を得て主治医・ケアマネに共有。
必要に応じてリハ職と合同訪問し、動作・介助方法を標準化する。
– 根拠 訪問看護の運営基準で、計画書の作成・同意・関係職種への情報提供と記録保存が求められている。
(4) 日常の連携(定期運用)
– 月次の訪問看護報告書を主治医・ケアマネに送付(病状経過、処置内容、リスク、次月の目標、課題)。
– ケアプランのモニタリングに合わせ、サービス担当者会議で目標・役割分担・支援方針を更新。
– 主治医の外来・訪問診療の前後で、看護師が事前情報提供(例 最近のSpO2変動、夜間の呼吸苦、転倒回数、嚥下状況)や受診後の指示確認を行う。
– リハ職はリハビリテーション実施計画書を定期的に更新し、看護・ケアマネ・主治医に共有。
生活目標(例 トイレ自立、外出再開)に対する到達度を可視化。
– 根拠 介護・医療の報酬体系に、計画立案・モニタリング・多職種連携の評価(各種加算)が設けられている。
(5) 急変時・入退院時の連携
– 利用者・家族→訪問看護(24時間連絡体制加算に基づくオンコール)→必要時、主治医と連絡・指示受け→往診/救急要請。
救急搬送時は直近のサマリー、服薬情報、ACP(事前指示)を同封。
– 再入院時は病院と在宅側で退院時と同様の「入院時情報共有」を迅速に実施し、継続課題(褥瘡、誤嚥、転倒等)を病棟へフィードバック。
– 根拠 24時間対応体制加算・緊急時訪問看護加算の要件、地域連携クリティカルパスの活用促進。
(6) 定期評価・計画更新(PDCA)
– 介護保険更新や状態変化に合わせ、目標・負担感・費用・QOLの観点で見直し。
– 介護者教育(吸引、経管栄養、移乗、口腔ケア、褥瘡予防、排泄ケア等)を段階的に実施し、習熟度を確認して計画に反映。
(7) 終末期・看取り
– 主治医と訪問看護が事前に方針(救急搬送の有無、疼痛管理、症状緩和、連絡体制)を合意形成。
ACP/意思決定支援の記録を全職種で共有。
– 看取り時は看護師が初期対応・死亡確認手順の調整・主治医連絡・関係者への報告を行う。
– 根拠 ターミナルケアに関する加算、在宅看取りの手順に関する厚労省通知等。
情報共有の方法と具体的なツール
– 文書・様式
– 訪問看護指示書(主治医→訪問看護)
– 訪問看護計画書・報告書(月次や状態変化時に訪看→主治医・ケアマネ)
– 診療情報提供書/退院サマリー(病院→在宅側)
– 看護サマリー/リハビリテーション実施計画書(訪看・リハ→関係者)
– 服薬情報(お薬手帳、ポリファーマシー対応のトレーシングレポート 薬剤師→医師・訪看)
– 地域連携パス(脳卒中・大腿骨頸部骨折等の疾患別パスで、目標・役割を共有)
– 会議・対面協議
– 退院前カンファレンス、サービス担当者会議、個別ケース会議、合同訪問(看護+リハ、看護+主治医等)
– 連絡手段
– 電話(緊急・重要事項)、FAX(指示書・報告書)、セキュアメール、地域医療・介護連携ICT(クラウド型共有、閲覧制限・アクセスログ付)
– 個人SNSの利用は個人情報保護の観点で避け、事業所の規程に沿った手段を用いる。
– 共有内容の例
– バイタル・症状推移、摂食嚥下状況、排泄パターン、睡眠、疼痛スケール、創傷評価(DESIGN-R等)、転倒・誤嚥・せん妄のインシデント、介護者負担、心理面、社会資源の活用状況、目標の達成度。
– リハはFIM/BI等の機能指標、在宅動作(移乗・歩行・更衣・入浴)の介助量、住環境の課題と改善案。
– 個人情報保護と同意
– 利用開始時に、情報共有の範囲・目的・手段について本人/家族から包括的同意を取得。
新規事業者の参加時には同意更新。
– 根拠 個人情報保護法、医療・介護事業者向けの個人情報取扱いガイダンス、医療情報システムの安全管理に関するガイドライン(厚労省)。
リハ職との連携の実際
– 配置形態
– 訪問看護ステーションにリハ職が在籍する場合 看護と同一カルテ・同一計画で連携しやすい。
– 医療機関や訪問リハ事業所が提供する場合 リハの実施計画書・サマリーを訪看・ケアマネに共有し、目標を合わせる。
– 連携の要点
– 目標・評価尺度の共通化(例 1か月でトイレ移乗の介助量を1段階軽減)
– 合同訪問で介助方法を家族と統一、用具選定の実地検証
– 看護視点(安全・症状管理)とリハ視点(活動・参加)のすり合わせ
連携がうまく機能しているかのチェックポイント
– 訪問看護計画書とケアプランの目標が整合している
– 月次報告書が主治医・ケアマネに確実に届き、フィードバックがある
– サービス担当者会議が定期開催され、議事録・アクションが残る
– 急変時のフロー(誰に、いつ、どう連絡するか)が家族にも明確
– 退院直後1〜2週間のフォローが手厚く、再入院リスクに先手を打てている
– リハの計画に具体的な生活目標と期限があり、達成度が見える
よくある課題と対策
– 連絡手段の分散(電話・FAX・メール・ICT) 窓口の一本化(担当看護師名・事業所代表番号)、共有先の明確化、緊急時と通常時で連絡方法を使い分ける
– 指示の曖昧さ 主治医指示書や診療録要点の文書化、変更時は必ず追補
– 情報の遅延 月次固定日での報告、受診前日の情報提供、ICTの通知設定
– 家族負担の見落とし 介護負担評価(Zarit等)の定期実施、レスパイト・通所の提案
– 多職種の目標不一致 サービス担当者会議でSMARTな共通目標を設定
制度・政策上の根拠(代表例)
– 訪問看護の人員・運営基準
– 指定訪問看護事業所は、主治医の指示に基づき訪問看護を実施し、訪問看護計画書の作成・同意取得・関係者への情報提供・記録保存・緊急時対応体制の整備等が省令で定められている。
– ケアマネ(指定居宅介護支援)の運営基準
– アセスメントに基づくケアプラン作成、サービス担当者会議の開催、モニタリング・評価、多職種連携が義務付けられている。
– 診療報酬・介護報酬上の評価(例)
– 退院時共同指導料、在宅時医学総合管理料(在総管)・施設総合マネジメント加算、訪問看護の24時間対応体制加算・緊急時訪問看護加算、ターミナルケア関連加算、訪問リハビリテーションのマネジメント加算等。
いずれも多職種連携・計画・報告・急変対応の体制整備を要件としている。
– 地域包括ケアと在宅医療・介護連携の推進
– 厚生労働省の在宅医療・介護連携推進事業の手引き等で、地域の多職種連携(連携会議、ICT活用、入退院時支援)の整備が示されている。
– 情報共有とセキュリティ
– 個人情報保護法、医療・介護事業者向け個人情報取扱いガイダンス、医療情報システムの安全管理に関するガイドラインにより、同意取得、目的外利用の禁止、アクセス管理、記録保管期間等が求められる。
– 実践的資料
– 厚労省や自治体の「訪問看護の手引き」「在宅医療・介護連携の手引き」、学会・協会のガイド(日本訪問看護財団、日本在宅ケアアライアンス等)に、計画書・報告書の標準様式や事例が掲載。
利用者・家族としてできること
– 退院前カンファレンスへの参加と希望の明確化(何を優先したいか、避けたいこと)
– 緊急連絡先・指示の控えを一枚にまとめ、冷蔵庫や電話の近くに掲示
– お薬手帳・最新のサマリー・ACPの写しを一式まとめて保管
– 受診・訪問の前に症状メモ(食事量、排泄、痛み、眠り、困りごと)を準備
– サービス担当者会議で遠慮せずに課題・負担感を共有
まとめ
退院後の訪問看護を中心とする在宅支援は、主治医の医学的判断、ケアマネの生活マネジメント、看護・リハの実践が、定期的な会議と文書・ICTを通じて結びつくことで機能します。
制度上も、指示書・計画・報告・急変対応・連携会議はそれぞれ根拠(運営基準や報酬要件)で裏づけられており、適切に運用されるほど再入院の予防、QOLの向上、家族負担の軽減につながります。
地域の実情に応じた連携の形は様々ですが、上記の「誰が・何を・いつ・どの手段で」を明確にし、PDCAを絶やさないことが、退院後の生活を安定させる鍵です。
夜間・緊急時の対応や24時間相談体制は実際にどう機能し、連絡手段は何が用意されているのか?
以下は、日本の訪問看護における「夜間・緊急時対応」や「24時間相談体制」が実際にどう動いているか、連絡手段は何が用意されているか、その根拠も含めて整理した解説です。
地域・事業所の体制により差はありますが、全国で共通する制度要件と現場運用を中心に記します。
1) 24時間対応の基本的なしくみ
– 事前準備(契約・計画)
– 退院前カンファレンス等で、主治医・訪問診療(在宅医)・訪問看護・ケアマネが緊急時の連絡体制を確認します。
– 利用契約時に「24時間対応の有無」「夜間・休日の連絡先」「緊急訪問の可否と範囲」「加算と自己負担」などが説明され、同意が取られます。
– 連絡先カード(看護ステーションの緊急電話、主治医、救急119、酸素・機器業者等)を配布し、冷蔵庫や電話横に掲示するのが一般的です。
– 事前指示(主治医の訪問看護指示書)やACP(延命・蘇生の希望)を共有し、夜間の判断基準も合意します。
夜間・緊急時の運用
専用のオンコール電話に家族・本人から連絡が入ります。
初動はオンコール看護師(当直・自宅待機)が対応します。
電話トリアージで重症度・緊急度を判断(呼吸困難、胸痛、意識障害、けいれん、大量出血、急な麻薬中毒性副作用、チューブ逸脱・閉塞など)。
対応の選択肢
電話助言のみ(安全確認・セルフケア指導・再連絡の約束)
緊急訪問(看護師が臨時に出動し処置・観察・家族支援)
主治医(訪問診療医)との即時連携(電話指示・往診要請)
直ちに119番(生命の危機が疑われる場合は救急通報を優先)
訪問後は経過を記録・主治医や関係職種に情報共有、翌日以降のフォローを調整します。
医療保険算定では、夜間の臨時訪問に関する医師の指示の裏付け(事後の書面化を含む)と記録が必要です。
連携とバックアップ
訪問診療(在宅療養支援診療所・病院)と連携している場合、医師側も24時間の連絡・往診体制を持ち、看護のオンコールと二重の安全網を形成します。
酸素・吸引器・栄養ポンプ等の在宅医療機器提供業者とも夜間緊急連絡先を共有し、機器トラブルは業者が一次対応、看護師が状態観察と併走する体制が一般的です。
2) 実際の連絡手段と使い分け
– 電話(最優先)
– 専用のオンコール携帯番号またはステーション代表番号の転送。
夜間は速やかに看護師に繋がるよう転送・鳴り分け等を設定。
– 大規模事業所では一次受付を外部コールセンター(看護師または医療知識のあるオペレーター)で受け、必要時にオンコール看護師へエスカレーションする方式もあります。
– 聴覚障害など事情がある場合、事前にSMSやファクス等の代替手段を取り決めることがありますが、緊急事態は通話が基本です。
セキュアメッセージ/ICT連携
医療・介護多職種連携には、医療情報安全ガイドラインに適合した専用システム(例 メディカルケアステーションMCS、バイタルリンク、地域連携ICT等)を用いる場合があります。
ただし「緊急時の初動」は通話で行い、メッセージは補完的(事後共有、写真添付、計画の更新等)に使うのが原則です。
一般のSNS(個人LINE等)は個人情報保護・セキュリティの観点から避け、業務用に管理されたプラットフォーム(例 LINE WORKS等)を用いる場合でも事業所の規程に従います。
メール・ファクス
取り急ぎの連絡手段としては不適。
夜間は確認が遅れやすく、緊急性がある内容は電話が必須。
主治医への文書化や機関への情報提供は事後にFax/電子カルテ連携で行います。
リモートモニタリング
一部で血圧計・パルスオキシメータ・体重計等のBluetooth機器をクラウドに自動送信し、閾値越えでアラート通知する仕組みを採用することがあります。
これも「補助的」で、アラート後は電話確認と必要時の訪問につなげます。
3) 夜間・緊急時の具体的な流れ(例)
– 呼吸苦・SpO2低下(在宅酸素)
1) 電話で姿勢・酸素流量・マスク/カニューレの装着確認、咳嗽・喘鳴・発熱の有無を聴取
2) 適切な流量調整や体位変換を助言、改善なければ緊急訪問または医師と協議
3) チアノーゼ・意識低下等があれば即119番を指示、看護師も現地へ向かい救急隊と情報共有
経管栄養チューブの抜去
1) 誤嚥リスクや出血の有無を確認し、直近の食止め・体位を助言
2) 主治医へ連絡し再挿入の要否判断、看護師の緊急訪問で創部管理・バルーン再注水(職能・指示内の場合)等を実施
がん疼痛コントロール不良
1) 痛みスケール、レスキュー使用量、副作用(眠気・便秘・悪心)を確認
2) 電話でレスキュー内服・貼付剤管理を助言、改善なければ緊急訪問し評価
3) 医師に連絡し用量調整や座薬・皮下注の指示を受ける。
終末期では看取りの可能性も含め家族支援
精神科領域の不穏・自傷リスク
1) 安全確保(環境調整・家族の複数名体制)を最優先
2) 担当精神科医・地域の精神科救急窓口に連絡、看護師は必要時訪問し家族と危機介入
3) 緊急度が高ければ警察・救急とも連携
4) 事業所側の人的体制
– オンコール当番制
– 常勤・非常勤で夜間の持ち回り。
都市部では30〜60分圏、農村部では距離や天候による到達時間の差を事前説明します。
– ダブルコール体制
– 複数名でバックアップし、同時多発への備えや女性単独夜間訪問の安全管理(複数訪問・家族同席の原則等)を取ります。
– 医師との連携協定
– 在宅療養支援診療所等と「24時間の相互連絡体制」「指示系統」「記録・事後報告」を明文化し、診療報酬・介護報酬の要件を満たすよう運用します。
5) 利用者が確認しておくべきポイント
– 24時間連絡先は一本化されているか、誰が出るか(看護師本人か、一次受付か)
– 緊急訪問の対象範囲(地理的エリア、夜間に対応できない処置の有無)
– 平均的な到着目安、悪天候時の代替策
– 119番の基準(この症状はまず救急、という目安リスト)
– 料金(24時間対応体制の加算、夜間・深夜・緊急時の加算、交通費等の自己負担)
– 連絡がつかない時のセカンド連絡先(連携する訪問診療・機器業者)
– 家の鍵・駐車場所・ペット等の安全配慮、夜間照明や表札など来訪時の目印
– 服薬リスト・アレルギー・直近のバイタル・ACPの共有と更新方法
6) 費用・制度上の根拠(概要)
– 医療保険(診療報酬)
– 訪問看護管理療養費および「24時間連絡体制加算」等が規定され、看護ステーションが24時間の連絡体制を整備し、必要時に臨時訪問できる体制を要件とします。
– 機能強化型訪問看護(I〜III型)では、24時間対応・看取り実績・多職種連携等の体制評価が加算に反映されます。
– 夜間・深夜・緊急時の訪問は時間帯加算・緊急訪問の評価があり、医師の指示・記録・報告が求められます。
介護保険(介護報酬)
訪問看護費に「24時間対応体制加算」「緊急時訪問看護加算」「特別管理加算」「ターミナルケア加算」等があり、24時間の連絡・出動体制の整備が算定要件として明示されています。
指定訪問看護の人員・運営基準(省令・通知)に、連絡体制の整備、苦情・事故対応、記録・報告等の義務が定められています。
在宅療養支援診療所・病院(在支診・在支病)
24時間往診・訪問看護との連携を要件とする診療報酬上の位置付けがあり、医師と訪問看護の連携による夜間対応の裏付けとなっています。
情報セキュリティ(連絡手段の根拠)
厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に基づき、患者情報の取り扱い、クラウドやメッセージアプリ利用時の安全管理、アクセス制御、ログ管理等が求められます。
緊急時でも安易な個人SNS利用を避け、管理された手段を用いることが推奨されます。
7) よくあるQ&A
– Q どのくらいで来てくれる?
– A 法令で分単位の義務は定められていません。
事業所は「速やかに」対応し、地理・人員による目安を事前に説明します。
都市部で30〜60分、郊外で60〜90分といった目安を公表する例が多いですが、同時要請・天候で変動します。
Q 夜間は看護師が必ず訪問する?
A すべてが訪問対象ではありません。
電話助言で安全が担保できる場合は非訪問、悪化リスクや処置が必要な場合は訪問。
生命危機が疑われる場合は救急要請が最優先です。
Q メールやチャットで相談できる?
A 日中の定期連絡では使うことがありますが、夜間の緊急時は必ず電話してください。
タイムラグや見落としを避けるためです。
8) 現場の実感と限界
– 強み
– 家族だけでは判断しにくい場面で、経験豊富な看護師が電話で即時に状況評価し、必要に応じ訪問・医師連携・救急要請へつなげられる点が最大の安心材料です。
終末期の苦痛緩和や看取りでも、夜間帯の支えが在宅継続の鍵になります。
課題
人手不足や広域エリアで同時要請が重なると到着が遅れることがあります。
気象災害・感染症流行時は訪問制限がかかることもあり、事前のセルフケア教育・備蓄・家族の役割分担が重要です。
参考・根拠(主な公的資料・ガイド)
– 厚生労働省 診療報酬点数表(在宅医療・訪問看護関連、令和6年度改定)および点数表の解釈
– 24時間連絡体制加算、機能強化型訪問看護、時間帯・緊急時の評価、医師指示・記録要件等
– 介護保険法に基づく 指定訪問看護の人員及び運営に関する基準(厚生省令)および通知・介護報酬告示・Q&A(令和6年度改定)
– 24時間対応体制加算、緊急時訪問看護加算、特別管理加算等の算定要件、連絡体制・苦情対応・事故報告・記録義務
– 在宅療養支援診療所・病院に関する診療報酬上の要件(24時間対応・訪看との連携)
– 厚生労働省 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン(最新版)
– 医療情報の取り扱い、クラウド・モバイル端末・メッセージングの安全管理
– 日本看護協会・日本訪問看護財団等の実務ガイド(訪問看護の24時間対応や緊急時対応の手引き、トリアージ・記録・安全管理の推奨)
最後に
– 24時間対応の具体は事業所ごとに差があります。
利用前に「連絡先はどれか」「誰が出るか」「到着目安」「緊急時の判断基準」「費用」「対応できないケース」「代替手段」を書面で確認し、冷蔵庫等に貼る。
夜間用に電話を充電・スピーカー設定、お薬手帳・最新バイタル・機器説明書を手元に置く——こうした小さな準備が、いざという時の安心と迅速対応につながります。
費用や保険適用、自己負担を抑えるための制度活用はどうすればよいのか?
以下は、退院後の生活を支える「訪問看護」の費用・保険適用・自己負担を抑える方法の全体像と、主な根拠の整理です。
地域差や個別条件で細部は変わるため、最終確認は主治医・訪問看護ステーション・加入保険者(協会けんぽ/健康保険組合/国保/後期高齢者医療広域連合)・市区町村介護保険課・地域包括支援センターで行ってください。
1) 訪問看護費用の基本構造(どの保険を使うか)
– 医療保険で使う場合
– 対象 65歳未満や、要介護認定がない人、または医療上の必要性が高い一定のケース(急性増悪期、ターミナル期などで主治医が「特別訪問看護指示書」を発行した14日間等)。
– 自己負担割合の目安 一般に70歳未満は3割、70〜74歳は2割(現役並み所得は3割)、75歳以上は1割が基本(一定以上所得は2〜3割)。
実際は所得区分で変動。
– 回数 原則週3回まで。
特別訪問看護指示書の期間(14日)やターミナル等は増回可。
– 費用の決まり方 訪問時間区分や夜間/早朝/休日の加算、24時間対応体制加算、緊急時訪問看護加算、特別管理加算、退院時共同カンファレンス加算などが診療報酬点数表で定められ、1点=10円を基準に計算。
自己負担割合を掛けて支払う。
介護保険で使う場合(原則65歳以上、または40〜64歳の特定疾病)
対象 要介護(要支援)認定を受けた人が原則(介護保険優先)。
40〜64歳は「加齢に伴う16の特定疾病」に限り介護保険の対象。
自己負担割合 原則1割。
一定以上所得で2割、さらに高所得で3割。
費用の決まり方 介護報酬の単位×地域単価(1単位あたり約10円前後、地域係数で変動)。
訪問時間区分や24時間対応体制加算、緊急時訪問看護加算、ターミナルケア加算などがあり、自己負担割合を掛けて支払う。
月々の利用量には要介護度ごとの「支給限度基準額(単位上限)」があり、上限超は全額自己負担。
ケアマネがケアプランで上限内に調整。
どちらを使うかの判断
原則は「要介護認定がある人は介護保険での訪問看護」。
ただし医療上の必要性が高い一定のケースや、特別訪問看護指示書発行期間などは医療保険で算定可能(医療保険優先の例外)。
退院直後は医療保険で手厚く、病状安定後に介護保険へ切替えるなど、主治医・ステーション・ケアマネで調整。
2) 実費になりやすいもの・留意点
– 交通費や駐車場代の実費請求 診療(介護)報酬に含まれる移動費とは別に、遠距離や有料道路・駐車場など「実費」相当を契約で徴収する場合あり。
事前に契約書・重要事項説明で確認。
– 消耗品 ガーゼ、手袋、衛生材料などで保険給付の対象外分は自己負担になることあり。
何が保険に含まれるかを確認。
– 24時間対応体制 24時間連絡可能な体制を契約すると毎月の定額加算が発生。
緊急対応が不要であれば外すことで自己負担を抑えられる場合あり(主治医・ステーションと安全性を相談)。
– 在宅医療機器 在宅酸素、人工呼吸器、吸引器などは別途保険算定(レンタル等)で自己負担が発生。
3) 自己負担を抑える制度(医療保険)
– 高額療養費制度
– 同一月(1日〜末日)の自己負担が所得区分ごとの上限額を超えた分が払い戻し。
多数該当(年3回以上)で上限が引き下げ。
– 事前に「限度額適用認定証」(または標準負担額減額認定証)を保険者から取得し、医療機関・訪問看護ステーションへ提示すると、窓口支払い自体を上限までに抑えられる。
– 訪問看護の自己負担も対象(医療保険算定分)。
– 公費負担医療の活用
– 指定難病(特定医療費)や小児慢性特定疾病、重度心身障害者医療費助成、母子(父子)医療、乳幼児医療など自治体の福祉医療助成で自己負担が大幅に軽減・ゼロになる場合あり。
対象・上限・自己負担は制度ごとに異なるため、市区町村の担当課で確認。
– 医療費控除(確定申告)
– 1年間の自己負担医療費が一定額(10万円または所得の5%のいずれか低い方)を超えると所得控除。
訪問看護の自己負担、医師の指示で必要な医療材料費、通院交通費(公共交通機関)が対象になりうる。
領収書を保管。
4) 自己負担を抑える制度(介護保険)
– 高額介護サービス費
– 1か月の介護保険の自己負担合計が所得区分ごとの上限額を超えた場合に超過分が支給。
訪問看護(介護保険算定分)も対象。
– 高額医療・高額介護合算制度
– 1年間(8月〜翌7月)の医療と介護の自己負担合計が上限を超えた場合、超過分が支給。
医療・介護の双方を利用している人の家計圧縮に有効。
– 要介護認定の迅速申請
– 退院前から申請を進め、認定待ち期間は「暫定ケアプラン」でサービス開始し、後日遡って介護保険請求される運用が可能(要調整)。
これにより医療保険での週3回制限や自己負担率の違いによる不利を避けられるケースがある。
– プラン調整
– 「支給限度基準額」内に収めるため、訪問看護と訪問介護・福祉用具貸与・住宅改修等をバランス良く組合せ、必要なケアの質を落とさず回数や加算の最適化を図る。
5) 退院前からの準備(費用最適化の実務)
– 主治医に訪問看護の必要性と頻度、特別訪問看護指示書の要否を確認。
– 病院の地域連携室/医療ソーシャルワーカー(MSW)に、保険の使い分け・高額療養費制度・限度額認定証の取得・介護保険申請・公費助成の該当可否の確認を依頼。
– 地域包括支援センター(65歳以上)または市区町村介護保険課で要介護認定申請。
退院日に合わせてケアマネ手配。
– 訪問看護ステーションとの契約時に、実費(交通費・材料費)や24時間体制の要否、緊急時対応の方針を明確化。
– 領収書・明細の保管(高額療養費や医療費控除に必須)。
6) ミニ事例(イメージ)
– 75歳、要介護2、心不全で退院。
退院後2週間は症状不安定で主治医が特別訪問看護指示書を発行。
前半14日は医療保険で毎日〜隔日訪問、以後は介護保険に切替え週2回。
限度額適用認定証を提示し医療保険分の窓口負担を上限化。
介護分はケアマネが支給限度内で調整。
心不全の自己管理支援を強化し、24時間対応は初月のみ契約。
結果、月間の自己負担が高額療養費・高額介護サービス費の適用で大きく圧縮。
7) よくある疑問
– Q 介護保険の対象でも、医療保険で使えるの?
– A 原則は介護保険優先。
ただしターミナル期や急性増悪期など医療上の必要性が高い場合は医療保険で算定可(主治医の指示書が鍵)。
– Q 交通費は払うの?
– A 報酬に含まれるが、契約で実費(駐車場・有料道路・遠距離)を徴収する場合がある。
契約書で確認。
– Q どの加算が本当に必要?
– A 24時間対応・緊急加算は安心だが費用増。
病状・家族体制・夜間連絡の必要性を踏まえて選択。
8) 主な根拠(制度・通知・基準の出所)
– 訪問看護の位置づけ・指示書
– 健康保険法・国民健康保険法、診療報酬点数表(在宅医療・訪問看護の各種加算、特別訪問看護指示書の取扱い、回数原則「週3回」等)
– 介護保険法、介護報酬(訪問看護の基本単位・加算、ターミナルケア加算、24時間対応体制加算、支給限度基準額)
– 介護保険優先/医療保険優先の整理は、厚生労働省の給付調整関連通知(介護と医療の境界領域に関する通知・Q&A)
– 自己負担割合
– 高齢者の医療の確保に関する法律(後期高齢者医療制度の1〜3割)、高齢受給者制度(70〜74歳の2〜3割)、健康保険法の一般被保険者の3割等
– 介護保険の利用者負担割合(1〜3割)は介護保険法および厚労省告示
– 高額療養費制度・限度額適用認定証
– 健康保険法・国民健康保険法・後期高齢者医療制度に基づく高額療養費制度(厚労省資料・Q&A)
– 高額介護サービス費・高額医療高額介護合算制度
– 介護保険法および関係通知(厚労省「高額介護サービス費制度の概要」「高額医療・高額介護合算制度の概要」)
– 公費負担医療
– 難病法(指定難病の特定医療費)、児童福祉法(小児慢性特定疾病)、自治体の福祉医療助成要綱 等
– 税制
– 所得税法の医療費控除(国税庁通達・Q&A)。
介護保険サービスのうち医療系に該当するもの(訪問看護等)は医療費控除対象。
最後に
– 訪問看護の費用は、「どの保険で算定するか」「加算の要否」「支給限度基準額内の設計」「高額(医療/介護)制度・公費の併用」で大きく変わります。
退院前カンファレンスで、主治医・MSW・訪問看護ステーション・(該当すれば)ケアマネを同席させ、費用見込みと制度適用のシミュレーションを行うのが最も効率的です。
制度は毎年度見直しがあるため、最新の診療報酬・介護報酬・自治体助成の条件を必ず確認してください。
必要であれば、想定される病状・年齢・所得区分・加入保険・要介護度などを教えていただければ、より具体的な費用感や手続き手順を整理してお伝えします。
【要約】
退院前カンファや住環境・物品準備、服薬整理を行い、退院直後はバイタル確認と連絡体制整備、1~2週は症状安定化、1~3か月で生活再構築。訪問看護は医療的ケア、観察・再発予防、服薬・栄養指導、家族支援、リハ、24時間対応や頻回訪問(条件付)を担い、医師・ケアマネ等と連携し費用・手続も支援。制度根拠も示す。