コラム

安心のケアを実現する医師とリハビリの連携―情報共有設計からシームレス支援、役割可視化・評価まで

なぜ医師とリハビリ職の連携が「安心のケア」につながるのか?

ご質問の「なぜ医師とリハビリ職(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士など)の連携が“安心のケア”につながるのか」について、仕組みと科学的根拠の両面から詳しく説明します。

ここでいう“安心のケア”は、医学的に安全で、機能回復の見通しが明確で、患者・家族が納得し不安が軽減された状態を目指すケアを指します。

連携が安心につながる理由は大きく分けて、医療安全の強化、機能回復の最大化、情報の一貫性と意思決定支援、ケアの継ぎ目解消(トランジションの質向上)、心理社会的支援と介護者支援の強化、という五つの柱に集約できます。

1) 医療安全の強化(リスクの早期発見と相互チェック)
– リハビリは運動負荷、嚥下訓練、日常生活活動訓練などの“能動的な”介入が多く、禁忌やリスク(不整脈、低血圧、骨粗鬆症による骨折リスク、嚥下障害による誤嚥、皮膚脆弱性など)を伴います。

医師が疾患の病期、併存症、薬剤(例 抗凝固薬、β遮断薬、鎮静薬)を踏まえて負荷量や禁忌を明確化し、リハビリ職が現場でバイタルや症状を連日モニタリングしてフィードバックする相互運用が、合併症の早期発見・回避につながります。

– 例えば脳卒中急性期では、誤嚥性肺炎のリスクが高い。

医師が嚥下スクリーニングや画像所見を踏まえ飲水の可否や姿勢を指示し、言語聴覚士が嚥下機能評価・食形態調整・訓練を実施することで肺炎を減らせます。

同様にICUでは、医師が鎮静量や血行動態を管理しつつ、理学療法士が早期離床を段階的に進めることで、転倒・抜管トラブルを避けながら廃用を防ぎます。

2) 機能回復の最大化(適切なタイミングと用量、ICFに基づく目標設定)
– リハビリの効果は「いつ開始するか」「どの程度の負荷を、どの機能に与えるか」で大きく変わります。

医師の診断(神経学的所見、画像、心肺機能、炎症・栄養状態)と、リハビリ職の機能評価(筋力・バランス・ADL・嚥下・認知)の統合により、適切なタイミングと用量が決まります。

– WHOのICF(国際生活機能分類)に沿って、心身機能・活動・参加の各レベルで多職種が共通言語で目標を立てると、訓練内容が生活目標に直結し、効果が高まります。

例えば「退院後に自宅の階段を手すり使用で安全に昇降する」という具体目標に対して、医師は心不全や貧血の是正、理学療法士は段差昇降訓練、作業療法士は住環境調整、看護は階段移動時の教育、という具合に役割が噛み合います。

3) 情報の一貫性と意思決定支援(不確実性の低減)
– 病気や障害に直面したときの不安の核心は「見通しの不確実性」です。

医師が疾患予後や治療計画を提示し、リハビリ職が機能回復の予測曲線や必要な練習量・補助具の選択肢を具体化することで、患者・家族の理解が深まり、納得した選択(手術の適応、在宅か施設か、就労復帰の段階など)ができます。

説明に一貫性があること自体が、安心感につながります。

– 共同意思決定(Shared Decision Making)を多職種で支えることで、患者の価値観に沿った現実的な計画(SMARTな目標設定)ができ、治療とリハビリへのアドヒアランスが高まります。

4) ケア移行の質向上(切れ目のない支援)
– 急性期病院→回復期→外来・在宅へと場が変わるたびに情報断絶が起きやすく、投薬やリハ計画の齟齬は再入院のリスクです。

医師とリハビリ職の退院前カンファレンス、共有計画書、地域の訪問リハ・かかりつけ医・ケアマネへの確実な引き継ぎにより、継続性が担保され再入院や機能低下を減らせます。

– 住環境調整(手すり、段差解消、福祉用具)や介護者教育も、リハビリ職と医師の共同で優先順位をつけると、退院直後の“転びやすい”期間を安全に乗り切れます。

5) 心理社会的支援と家族支援(安心の主観的側面)
– 痛み、不眠、不安、抑うつは機能回復を妨げます。

医師が薬物療法や鑑別(せん妄・うつ病)を行い、リハビリ職が非薬物的介入(有酸素運動、姿勢・体位、自己効力感を高める指導、社会参加の練習)を組み合わせると、症状緩和と自己管理力が向上します。

家族への介助方法の実地指導は介護負担感を軽減し、家庭内の安心を支えます。

代表的な疾患領域での具体例と根拠
– 脳卒中
– ストロークユニット(医師+リハビリの学際的チーム)は、一般病棟よりも死亡・要介護の複合アウトカムを有意に減らすことが複数のランダム化比較試験を束ねた系統的レビューで示されています(Stroke Unit Trialists’ Collaboration, Cochrane)。

嚥下評価の標準化、早期離床、二次予防、家族教育など連携のパッケージが奏功点です。

– 早期支援退院(Early Supported Discharge)では、病院チームと地域リハチームが一体的に関わることで、在院日数短縮と機能回復、満足度の改善が報告されています(Langhorneらのレビュー)。

– 日本脳卒中学会ガイドラインも、急性期からの早期リハ、嚥下スクリーニング、学際的チーム介入を推奨しています。

心血管疾患(心筋梗塞・心不全)

心臓リハビリテーションは、運動療法・教育・心理支援を含む多職種連携プログラムとして、総死亡と心血管死亡の低下、再入院の減少、QOL改善がCochraneレビュー等で確立しています(Anderson L, 2016など)。

医師の薬物最適化と安全域の設定、理学療法士の個別運動処方、栄養・心理支援が一体で機能します。

日本循環器学会のガイドラインも、医師・看護・リハ・薬剤・栄養の連携によるフェーズ別プログラムを推奨。

慢性呼吸器疾患(COPD)

呼吸リハビリは、運動耐容能と呼吸困難、生活の質を改善し、急性増悪後の再入院と死亡を減らすエビデンスがあります(McCarthy 2015 Cochrane等)。

医師が吸入療法・在宅酸素・併存症を調整し、理学療法士が運動・呼吸筋訓練、作業療法士が省エネ動作訓練、言語聴覚士が嚥下関連の介入を行うことで、総合的な安心につながります。

高齢者総合機能評価(CGA)と大腿骨近位部骨折

高齢者に対するCGAベースの多職種介入は、機能回復、在宅復帰、施設入所回避、生存率改善に寄与することが系統的レビューで示されています(Ellis et al., BMJ 2011)。

大腿骨骨折では、整形外科と老年科医、理学・作業療法士、栄養・看護の共同で、早期手術と早期離床・二次骨折予防を行うチームケアが、死亡率や合併症を減らすとNICEガイドラインが示しています。

日本の関連学会も同様の推奨です。

ICU・急性期一般

早期動員は、機械換気患者でのせん妄期間短縮、機能的自立改善、在院日数短縮をランダム化試験が示しています(Schweickert 2009)。

医師の鎮静軽減と安全基準、リハビリ職の段階的離床の連携が不可欠です。

ABCDEFバンドル(鎮痛・鎮静最適化、呼吸・覚醒、早期動員、家族関与)は学際的プロトコルとして死亡やせん妄を減少させます。

連携がもたらす患者体験の改善
– 情報の一貫性 診療と訓練の説明が一致し、何をいつまでに目指すかが明確。

見通しがわかることで不安が軽減。

– 迅速な軌道修正 体調変化に応じて、その日の訓練負荷や薬の調整が即時に行われ、患者は「見守られている」感覚を持てる。

– 家庭・就労への橋渡し 退院後の生活設計(家事のやり方、通勤動線、職場調整)までチームで具体化し、復帰への自信につながる。

現場での実践策(安心につながるプロセス)
– 週次カンファレンスと短時間のデイリーハドルで、目標・禁忌・当日の優先課題を共有。

SBARなどの標準化した伝達様式を利用。

– 共有ケアプランに、ICFでの目標、具体的介入、リスク管理(転倒、DVT、褥瘡、誤嚥)、責任者、評価指標(例 FIM/BI、6分間歩行、嚥下評価、PHQ-9)を明記。

– 退院前の家屋評価と介護者トレーニング、地域資源への連携(訪問看護・訪問リハ、地域包括支援センター)。

– 電子カルテの共同記載・チェックリスト化、プロトコル(嚥下手順、離床基準、心リハ運動負荷基準)の整備。

– 成果指標のモニタリング(再入院率、在宅復帰率、機能利得、患者満足度)とチームの継続的改善。

限界と留意点
– 連携不全(縦割り、情報遅延)は逆にリスク。

共通言語(ICF)とルール作りが鍵。

– 人員や時間資源が不足する場では、優先度(安全・目標・移行支援)を明確化し、テレリハやグループ教育を併用。

– 価値観の異なる目標(例 安全最優先 vs 自立性重視)が衝突することも。

共同意思決定で合意形成を図る。

主な根拠文献・ガイドライン(代表例)
– Stroke Unit Trialists’ Collaboration. Organised inpatient stroke unit care Cochrane Database Syst Rev.
– Langhorne P et al. Early supported discharge services for stroke Cochrane.
– AHA/ASA 脳卒中ガイドライン、日本脳卒中学会 脳卒中治療ガイドライン.
– Anderson L et al. Exercise-based cardiac rehabilitation Cochrane Database Syst Rev 2016.
– 日本循環器学会 心血管リハビリテーションに関するガイドライン.
– McCarthy B et al. Pulmonary rehabilitation for COPD Cochrane 2015、日本呼吸器学会 呼吸リハビリテーションガイドライン.
– Ellis G et al. Comprehensive geriatric assessment BMJ 2011.
– NICE Hip fracture management guideline(NG124).
– Schweickert WD et al. Early physical and occupational therapy in mechanically ventilated patients Lancet 2009.
– ABCDEF Bundle(Society of Critical Care Medicine)関連研究。

– WHO Rehabilitation 2030、ICF(国際生活機能分類)。

結論
医師とリハビリ職の連携は、病態把握と機能評価の統合、リスク管理と素早い軌道修正、生活目標に直結する具体的計画、切れ目ない継続支援を可能にし、医学的安全性・機能回復・心理的安心の三位一体で患者・家族の“安心のケア”を実現します。

この連携モデルは脳卒中、心血管・呼吸器疾患、整形外科、ICU、高齢者医療など広範な領域で、死亡・合併症・再入院の減少、機能・QOL・満足度の向上という形で科学的に裏づけられています。

現場では、共通目標・共通言語・標準化プロトコル・確実な情報共有・退院後支援を徹底することが、患者にとっての「安心」を具体的成果に結びつける最短ルートです。

効果的なチームコミュニケーションと情報共有はどう設計すべきか?

医師とリハビリ職(PT・OT・ST・義肢装具士・ソーシャルワーカー等)が連携して「安心のケア」を実現するには、個々の善意や経験に頼るのではなく、チームコミュニケーションと情報共有を“設計”として制度化・標準化することが重要です。

以下では、実践的な設計要素、運用の具体、評価と改善、そして根拠(エビデンス・ガイドライン)をまとめて解説します。

基本設計の原則(原理)

– 共同目的と共通言語の明確化
– 共通の最上位目的を「患者の機能回復・生活再建(ICFの視点)」に置き、医学的ゴール(疾患安定化)と生活ゴール(参加・役割復帰)を接続。

目標設定はSMART+GAS(Goal Attainment Scaling)で可視化。

– 用語はICF、Barthel Index、FIM、mRS、疼痛NRS、可動域、嚥下レベル等、標準化されたスケールを優先。

これにより職種間の解釈差を縮小。

– 標準化されたコミュニケーション様式
– 緊急・準緊急・定常の場面別にツールを統一(例 SBAR、I-PASS、クローズドループ)。

– 最小十分な情報(need-to-know)と見える化
– 役割に応じて必要情報をダッシュボード化(例 転倒リスク、禁忌、活動レベル、装具・食形態、離床目標、次のマイルストーン)。

– 患者・家族の共同意思決定(Shared Decision Making)
– ゴール設定会議に患者・家族が参加。

テーチバックで理解確認。

– 心理的安全性と発言促進
– “Speak up”を奨励し、質問・異議申し立てが歓迎される風土を明文化(Just Culture)。

コミュニケーション設計(場面別・様式)

– デイリーハドル(5–10分)
– 目的 当日のリスク共有(転倒・嚥下・装具不具合・鎮静/せん妄・感染隔離・退院調整の要点)。

– 進め方 ファシリテータ1名、タイムボックス、患者リストに基づく要点確認、アクションの担当者・期限を明確化。

– 週間カンファレンス(30–60分のMDT/IDT)
– 参加 医師、看護、PT/OT/ST、MSW、薬剤、栄養、必要に応じ装具士・介護支援専門員。

– アジェンダ 機能評価の推移、合併症リスク、治療計画の見直し、退院先候補とサービス、次週のGAS目標、阻害要因と対策。

– 患者・家族参加枠を設け、本人ゴールを最初に確認。

– コンサル・指示受けはSBARで統一
– Situation(現状)、Background(経過・既往)、Assessment(評価・仮説)、Recommendation(提案・要請)。

– ICU/急性期ではクローズドループ(復唱・確認)を徹底。

– 申し送り・引継(Handoff)はI-PASS型
– Illness Severity、Patient Summary、Action List、Situation Awareness & Contingency、Synthesis by Receiver。

– 退院・転院サマリーも同構造で統一。

特にリハ目標・達成度・残課題・家庭環境・必要サービス・禁忌/注意点を標準項目化。

– 迅速エスカレーションルート
– “血圧低下・SpO2低下・意識変容・新規神経所見・嚥下誤嚥疑い・新規疼痛増悪”等の閾値を明文化し、誰に、どの手段で、何分以内に報告するかプロトコル化。

情報共有のアーキテクチャ(何を、どこに、誰が)

– コア情報セット(最低限必須)
– 診断・治療ステータス、活動許可(離床レベル・荷重制限・ROM制限)、装具・補助具仕様、摂食嚥下レベルと食形態、認知・コミュニケーション機能、痛み・せん妄リスク、ADL指標(FIM/Barthel)、転倒・褥瘡リスク、家屋・家族支援状況、退院目標と予定日(EDD)、次の評価日。

– 文書・テンプレートの標準化
– リハ処方・計画書、週次MDT要約、退院サマリー、地域連携パス(例 脳卒中・心不全)。

– SOAP記載に加え、GASとICFコードを反映。

– 可視化ダッシュボード
– 患者一覧にカラーフラグ(転倒高リスク、嚥下注意、感染、RASS/せん妄、DVT予防、骨折部位と荷重制限)。

PT/OT/ST各自の今日の目標・阻害要因を一行表示。

– 相互運用性と用語標準
– EHRはHL7 FHIRで共有項目を構造化。

用語はSNOMED CT/ICD、ICFコード、食形態は病院標準の対照表を定義。

– アクセス制御と同意
– 個人情報保護法に基づく同意管理。

多職種・地域での情報共有は利用目的と最小限原則を徹底。

ケア移行(トランジション)設計

– 急性期→回復期・在宅の“ブリッジングカンファ”
– 転院前に受け皿側の担当者同席かオンライン参加。

装具適合、住環境改修の着手、介護保険・福祉用具の手配を前倒し。

– 地域連携パスの活用
– 脳卒中・心不全・大腿骨頸部骨折等で地域連携クリティカルパスを適用。

目標日程、マイルストーン、担当責任を明文化。

– 退院後72時間内のフォロー
– フォンコールまたは訪問で問題早期発見(疼痛管理、転倒、薬剤、嚥下トラブル、装具不具合)。

再入院リスク低減。

ヒューマンファクターと文化

– 心理的安全性を高める仕掛け
– ハドルでの“安全瞬間”(良い発言・気づきの称賛)。

上席が自ら不確実性を口にするモデリング。

– クローズドループの徹底
– 指示は復唱で確認し、完了報告を必須化。

忙しい現場ほど効果的。

– デブリーフと学習
– 週次で短時間の振り返り(何がうまくいき、何を改善するか)。

重大事例はRCA(根本原因分析)でシステム改善へ。

トレーニングと実装ステップ

– 研修
– TeamSTEPPS、SBAR/I-PASS、ICF/GAS、せん妄・誤嚥リスク、装具・荷重指示読み方等のモジュール化。

シミュレーションを併用。

– 実装
– 現状診断(プロセスマッピング)、ギャップ分析、パイロット病棟でPDSA、小規模成功の水平展開。

– ツール
– 共通テンプレート、チェックリスト、ハドル用ボード、アラート設定、電子フォーム、院内メッセンジャーの既読・エスカレーション機能。

成果指標(KPI)とフィードバック

– 患者アウトカム
– FIM/Barthelの改善量、転倒・誤嚥性肺炎・褥瘡発生率、在院日数、再入院率、早期離床達成率、退院先(自宅復帰率)、患者満足度。

– プロセス指標
– ハドル/MDT開催率、退院サマリー24–48時間以内送付率、I-PASS準拠率、SBAR使用率、目標(GAS)合意率、72時間フォロー実施率。

– チーム健全性
– TeamSTEPPS T-TPQや職員満足度、離職率、バーンアウト尺度。

– 監査とフィードバック
– 月次ダッシュボードで可視化。

ピアレビューで記載質を改善。

Cochraneでも効果が示される監査とフィードバックを継続。

よくある落とし穴と対策

– 会議の形骸化
– 目的・アジェンダ・成果(決定事項と担当・期限)を明確にし、15分でも価値を出す。

不要参加者を減らし、必要者を確実に。

– 情報過多・重複
– コア情報セットの一本化と自動連携。

フリーテキストより構造化データを優先。

– 個人スキル依存
– 標準ツールの導入とトレーニングで属人性を低減。

交代に耐える設計。

– セキュリティと共有のジレンマ
– 権限管理と同意の運用を明文化。

患者の同意範囲を記録し、必要最小限共有を守る。

現場の実例(簡易サンプル)

– 1日の流れ
– 830 デイリーハドル 転倒高リスク3名に見守り強化、Aさんは嚥下再評価前でゼリーのみ等。

– 午前 リハ実施 PTは荷重制限下の歩行訓練、OTは更衣、STは嚥下訓練。

各々EHRにGAS進捗を入力。

– 1300 迅速カンファ Bさんの疼痛悪化に対し鎮痛・装具調整・訓練内容変更を合意。

– 1630 退院前カンファ準備 家屋写真、段差、手すり位置、福祉用具見積、介護保険申請状況を整理。

– 週間MDT
– 各症例でFIM推移、合併症、退院目標の妥当性、次週GAS、担当・期限を確認。

未達要因に対し薬剤調整や装具変更を即決。

根拠(エビデンス・ガイドライン等)

– 標準化コミュニケーション
– I-PASS(多施設クラスター試験) 小児入院で引継ぎ改善により医療過誤23%、防止可能有害事象30%減少が報告(Starmer AJら, NEJM 2014)。

– SBAR 系統的レビューで情報の完全性・受け手の理解が改善し、意図せぬイベント減少の報告(Müllerら, 2018等)。

– クローズドループ シミュレーション・救急領域で指示誤解・遅延が有意に減少(Hunzikerら)。

– チームトレーニング
– TeamSTEPPS 導入病院で転倒・褥瘡の減少、チームワーク認識の改善を示す前後比較研究が多数(Sheppardら, 2013以降)。

– 多職種チーム/回診
– 多職種回診・ハドル 転倒率・在院日数の減少、満足度の向上を示す報告(O’Learyら、Weaverら)。

– 組織化された脳卒中ケア
– Cochrane Stroke Unit Trialists’ Collaboration 多職種による組織化ユニットで死亡・要介護のリスクが低下。

リハ連携の有効性を裏付け。

– 目標設定とICF/GAS
– GAS活用は患者参加とモチベーション向上、達成度の可視化に有用とする研究が蓄積(Turner-Stokesら)。

– ICF導入で職種間の共通言語が形成され、目標整合性と記録の質が改善(Ciezaら)。

– ケア移行
– 地域連携クリティカルパス(脳卒中・心不全) 日本国内研究で在院日数短縮、機能予後・満足度の改善、再入院率低下の報告。

– 退院後早期フォロー 再入院減少と満足度向上(ColemanのCare Transitions Interventionなど関連エビデンス)。

– 監査とフィードバック
– Cochraneレビュー 臨床実践を小から中等度改善する効果が一貫(Iversら, 2012)。

まとめ(実行の要点)

– 場面別の標準ツール(SBAR/I-PASS/ハドル/クローズドループ)をセット導入する。

– 情報はICFと標準指標で構造化し、ダッシュボードで見える化する。

– 目標はSMART+GASで患者と合意し、週次MDTで更新する。

– トランジションでは地域連携パスとブリッジングカンファ、72時間内フォローを固定化する。

– KPIを定め、監査・フィードバックとデブリーフで継続改善する。

– 心理的安全性とSpeak up文化を育て、個人技から“設計されたチーム”へ。

これらを一体として設計・実装することで、情報の漏れや解釈違い、ケアの断絶を減らし、合併症予防・機能回復・自宅復帰の質を底上げできます。

エビデンスは完璧ではない領域もありますが、標準化コミュニケーション、組織化リハ、ケア移行の改善に関しては、国内外の研究・ガイドラインが一貫して有効性を支持しています。

退院支援から在宅・外来まで切れ目ない連携を実現するには?

ご質問の「医師・リハビリ職との連携で実現する安心のケア—退院支援から在宅・外来まで切れ目ない連携」の実現には、入院早期からの計画的な退院支援、医療・介護の多職種協働、標準化された情報連携、退院後早期のフォロー、在宅・外来での継続的なモニタリングという一連のプロセスを、患者・家族を中心に据えて設計・運用することが鍵になります。

以下に、実践のための具体策と根拠をまとめます。

1) 基本原則(なぜ「切れ目のない連携」が必要か)
– 退院直後は、服薬・栄養・ADL/IADL・住環境・家族介護など複数の課題が同時に立ち上がり、再入院リスクが高まる時期です。

入院→在宅の移行支援(トランジショナルケア)を体系的に行うことで、再入院や合併症、機能低下を減らし、QOLと満足度を高められることが国内外で示されています(ColemanらのCare Transitions Intervention、NaylorらのTransitional Care Model、複数の系統的レビュー)。

– リハビリテーションは、機能回復だけでなく、生活再建・環境調整・介護者教育を通じて「その人らしい生活」を支える専門領域です。

医師の病態管理とリハ職の生活機能支援が相補し合うことで、在宅維持率と活動性が高まります。

– 日本の制度面でも、退院支援・医療介護連携を評価する診療報酬・介護報酬(入退院支援加算、退院時共同指導、地域連携パス等)が整備され、標準化された枠組みでの連携が推進されています(厚生労働省)。

2) フェーズ別の実践ステップ
A. 入院早期(入院後48–72時間以内)から退院支援を開始
– スクリーニングとアセスメント
– 再入院リスク(多疾患併存、心不全/COPD、独居、せん妄歴、認知症、嚥下障害、ポリファーマシー等)を看護・MSWが評価。

– リハ職(PT/OT/ST)がADL/IADL、移動能力、認知・高次脳機能、嚥下・コミュニケーション、住環境の暫定評価を実施(FIM、Barthel Index、歩行速度、握力など)。

– 医師が病態の安定性、再発リスク、薬物療法の最適化方針を整理。

– ICFに基づく目標設定
– 身体機能だけでなく、活動・参加、環境因子(住環境、社会資源)まで含めたゴールを患者・家族と合意形成。

クリティカルパスやリハ実施計画書に落とし込みます。

B. 退院前の具体的準備(退院2–3週間前〜)
– 退院前カンファレンス(対面・オンラインを併用)
– 参加者 主治医、病棟看護師、MSW、薬剤師、PT/OT/ST、栄養士、ケアマネジャー、訪問看護/訪問リハ/通所リハ事業所、地域包括支援センター、家族・介護者。

– テーマ 退院先の決定、必要サービス(訪問看護・訪問/通所リハ・福祉用具・住宅改修・外来フォロー)の選定と開始時期、服薬・栄養・嚥下・排泄・認知行動・口腔ケアの計画、介護者トレーニング、緊急時連絡体制。

– 退院前自宅評価・外出訓練
– リハ職が自宅訪問(または詳細な住環境情報の聴取・写真/動画)を行い、段差・手すり・動線・ベッド/トイレ/浴室の安全性を評価。

退院前外出訓練で実地確認・介護者指導を行います。

– 暫定ケアプラン・暫定契約
– 要介護認定申請(入院中申請可)、ケアマネによる暫定プラン策定。

退院日から介護サービスが空白なく開始できるよう、事業所と暫定契約・初回訪問日を確定。

– 薬剤・栄養・嚥下の最終調整
– ポリファーマシーの見直し、服薬カレンダー/一包化、在宅での嚥下食形態と栄養目標を確定し、家族に指導。

– リハビリのブリッジング
– 外来リハ/訪問リハの初回予約を退院前に確保。

退院後1週間以内(可能なら72時間以内)の初回訪問・受診を設定。

C. 退院時の情報引き継ぎ(標準化と見える化)
– 退院サマリー+リハサマリーの標準化
– 診断・治療経過・合併症、バイタル/検査の基準値、注意点、再発警告症状、服薬、食形態・嚥下所見、排泄、創傷/褥瘡、禁忌、次回受診日。

– リハ情報 FIM/Barthel、移動手段と要介助量、屋内外歩行限界、自己管理の可否、福祉用具仕様、住宅改修内容と使い方、具体的な自宅課題、長期目標・短期目標。

– 退院時共同指導
– 医師・看護・リハが在宅側(訪問看護/訪問リハ/ケアマネ)と対面またはオンラインで共同指導を実施。

本人・家族へも同席頂き、同じメッセージを共有。

– 緊急時・時間外の連絡体制
– 主治医/地域連携室/訪問看護の緊急窓口、時間帯ごとの連絡先を明示。

D. 退院直後(1〜2週間)のトランジショナルケア
– 48–72時間以内の初回フォロー
– 電話/オンラインで看護師・MSWがバイタル、服薬、食事・水分、排泄、転倒、痛み、不安を確認。

問題があれば医師・リハと即時共有。

– 初回訪問リハ/訪問看護
– 自宅環境での実動作評価(移乗、トイレ、浴室、段差、調理等)、安全確保、家族指導、ホームエクササイズの処方。

– 薬剤・栄養の再評価
– 実際の服薬状況、嚥下・食事摂取量の確認。

必要に応じて栄養補助や剤形変更を主治医と調整。

– 早期外来受診
– 退院後7〜14日で外来フォロー。

悪化兆候の早期発見・介入。

E. 在宅・外来期の継続支援
– 定期カンファレンス
– 月1回程度、ケアマネを中心に多職種で目標進捗を評価し、プランを更新(ICFベース)。

生活期リハの目標(活動・参加)へ段階的にシフト。

– プログラムの最適化
– 訪問/通所/外来リハの使い分け(移動能力・家族負担・目的に応じて)。

自主練習とテレリハの併用で頻度・密度を補完。

– 再入院予防のプロトコル
– 心不全・COPD・脳卒中など疾患別の増悪サインの教育、体重/SpO2/血圧のセルフモニタリング、急変時フローチャート。

– 社会参加の支援
– 就労支援、地域通いの場、福祉サービス、公共交通や移動支援の活用促進。

3) 情報連携とICT活用
– 共有プラットフォーム
– 地域医療連携ネットワークやセキュアな情報共有ツールで、退院サマリー、リハ記録、訪問記録をリアルタイムに共有。

– 標準化フォーマット
– 診療情報提供書、退院時要約、リハ連携シートの標準様式化。

必要最小限のコア項目を合意し、記載負担を抑制。

– 個人情報保護
– 本人同意、アクセス権限管理、医療情報システム安全管理ガイドラインに準拠した運用。

4) 役割分担と人材育成
– 医師 病態管理、薬剤最適化、リスク層別化、緊急時対応、外来フォローのハブ。

– リハ職(PT/OT/ST) 機能評価と訓練、住環境調整、介護者教育、活動・参加の実装、在宅課題の同定。

– 看護師 セルフケア支援、症状マネジメント、服薬・栄養・排泄・創傷管理、電話フォロー。

– MSW/地域連携室 制度調整、経済・社会資源への橋渡し、家族支援。

– 薬剤師/栄養士/歯科衛生士 ポリファーマシー是正、栄養・嚥下・口腔機能の最適化。

– ケアマネ 多職種のハブ、ケアプラン策定、定期モニタリング・再設計。

– 教育 ICF、退院支援スクリーニング、カンファレンス運営、退院サマリー作成、コミュニケーションの研修をチームで共有。

5) 指標(KPI)と質改善
– 再入院率(30/90日)、在院日数、自宅退院率、退院後30日の外来受診率、退院後7日以内の初回訪問実施率、FIM利得/維持、転倒・誤嚥・褥瘡発生率、患者/家族満足度。

– 事例レビュー(リードミスや情報断絶の分析)、PDSAで連携プロセスを継続的に改善。

6) よくある障壁と解決策
– 退院後サービス開始までの空白 入院中の要介護認定申請、暫定ケアプラン、退院前に初回訪問日を確定。

– 情報の断絶 標準化サマリーとICT共有、退院時共同指導の実施。

– 負担過多 記録のテンプレ化、タスクシフティング(事務/連携室の活用)、オンライン会議の導入。

– 合意形成の難しさ 患者・家族の価値観と意思決定支援(ACP)を早期から実施。

7) 具体的に使えるチェックリスト(要約)
– 入院48–72時間以内 退院支援スクリーニング、ICF目標の仮設定、ケアマネ紹介。

– 退院前2–3週間 退院前カンファ、住環境評価、介護者訓練、薬剤・嚥下・栄養の調整。

– 退院1週間前 外来/訪問リハの初回予約、退院サマリー作成、共同指導日程確定。

– 退院日 書類引き継ぎ、緊急連絡票、福祉用具設置確認。

– 退院後72時間 看護フォロー連絡、初回訪問、課題是正。

– 退院後2週間 医師外来、プラン微調整。

– 月1回 多職種カンファ、KPIモニタリング。

根拠(主要なエビデンス・政策文書)
– 早期退院支援と在宅移行(ESD Early Supported Discharge)
– 脳卒中におけるESDは在院日数短縮、機能予後・満足度の改善、施設入所の減少を示す高質なエビデンスが蓄積。

Cochraneレビュー(Langhorne Pら、Cochrane Database Syst Rev、更新版)やメタアナリシスが代表的根拠。

– トランジショナルケア(多職種・患者中心・退院後早期フォロー)
– Coleman EAらのCare Transitions Intervention(Arch Intern Med 2006)は30日再入院・費用の有意な減少を示すランダム化比較試験。

– Naylor MDらのTransitional Care Model(高齢者慢性疾患)でも再入院減少・費用対効果が示されている(複数RCT・システマティックレビュー)。

– Hansen LOらの系統的レビュー(Ann Intern Med 2011)は、退院要約の質向上、患者教育、フォロー連絡、薬剤管理、責任者の明確化を組み合わせた多面的介入が有効と結論。

– 情報連携と共同指導
– 退院時の標準化サマリーと他職種カンファレンスは、情報断絶・医療過誤リスクを低減することが報告されています(Hesselinkらのレビュー等)。

– 日本の政策・制度的根拠
– 厚生労働省「地域包括ケアシステム」の推進文書 医療・介護の切れ目ない連携、在宅療養の推進。

– 診療報酬(入退院支援加算、退院時共同指導料、地域連携クリティカルパス、地域包括ケア病棟等) 連携・退院支援を評価。

– 地域連携クリティカルパス(脳卒中・大腿骨近位部骨折など) 急性期—回復期—生活期の情報共有と機能予後の可視化を全国で実装し、アウトカム改善の報告が蓄積(日本脳卒中学会の手引き、日本整形外科学会のパス等)。

– 介護保険制度 入院中からの要介護認定申請、暫定ケアプラン、訪問/通所リハ、福祉用具・住宅改修など、移行支援に資する仕組み。

– 退院支援の手引き・地域医療連携推進の各種ガイドライン(厚労省医政局・老健局)に、早期支援、標準化サマリー、共同指導、ICT活用が明記。

リハビリ職が果たす特に重要な役割
– 家屋評価と「できる活動」を増やす環境設計(段差解消、手すり、トイレ・浴室動作の導線最適化、福祉用具選定)。

– 介護者トレーニング(移乗・体位変換、誤嚥予防、口腔ケア、行動・認知症対応)。

– 自主練習(ホームエクササイズ)と生活行為向上(調理、買い物、金銭管理等IADL)の具体化・定着支援。

– 嚥下・コミュニケーション機能の改善・補助手段導入と、食形態・姿勢・一口量などの生活内応用。

まとめ
– 切れ目のない連携は「入院早期からの退院支援開始」「退院前の多職種カンファと家屋評価」「標準化された退院サマリーと共同指導」「退院後72時間以内の初回フォロー」「在宅・外来期の定期カンファとKPI評価」という5つの柱で構築します。

– 医師の病態管理とリハ職の生活機能支援が相互に補完し、ケアマネをハブに介護資源を統合することで、安心・安全で自立を促す在宅生活を実現できます。

– 国際的なRCT・メタアナリシス(ESD、トランジショナルケア)と日本の制度・ガイドラインが、このアプローチの有効性と実装可能性を裏付けています。

参考(代表的ソース)
– 厚生労働省 地域包括ケアシステム関連資料、入退院支援の推進、診療報酬(入退院支援加算・退院時共同指導・地域連携パス)通知類
– 日本脳卒中学会「脳卒中地域連携クリティカルパスの手引き」、日本整形外科学会の骨折地域連携パス資料
– Cochrane Review Early supported discharge services for people with acute stroke(Langhorneら)
– Coleman EA et al. The Care Transitions Intervention(Arch Intern Med 2006)
– Naylor MDら Transitions/Transitional Care Model(複数論文・レビュー)
– Hansen LO et al. Interventions to reduce 30-day rehospitalization(Ann Intern Med 2011)
– Hesselink G et al. Transitional care handoversのレビュー(Qual Saf Health Care系)

上記を自院・自地域の実情に合わせて、フォーマットの標準化、ICTの整備、KPIによるモニタリングを並行して進めることが、持続可能で質の高い連携体制づくりの近道です。

専門性と役割分担をどう可視化し、合意形成を進めればよいのか?

ご質問の「医師・リハビリ職との連携で実現する安心のケア」において、専門性と役割分担をどう可視化し、合意形成を進めるかは、チームの共通言語づくり、プロセスの標準化、アウトカムの共有という3層で設計するのが実践的です。

以下、具体策と根拠を体系的にまとめます。

1) 共通ゴールと言語の確立(“何を目指すか”の可視化)
– ICFに基づく目標設定: 医学的診断(疾患)だけでなく、心身機能・活動・参加・環境因子を含めて目標を描きます。

SMART(Specific/Measurable/Achievable/Relevant/Time-bound)な短期・中期・長期目標に落とし込み、Goal Attainment Scaling(GAS)で達成度を評価すると、医師・PT・OT・ST・看護・MSW・栄養など異職種の視点が自然に束ねられます。

ICFとGASの併用は回復期リハでも有効性が検証されています。

– 患者・家族の価値観を中核に: 共同意思決定(Shared Decision Making, SDM)の面接構造(選択肢提示→情報共有→意思決定支援)を用い、患者が大切にする活動や生活役割を翻訳して目標に組み込みます。

エルウィンらのSDMモデルは治療満足度と治療遵守の向上に関連します。

– 標準化アウトカム指標のセット化: 例として、脳卒中ならNIHSS(急性期)、Fugl-Meyer、mRS、FIM/MBI、BBS、TUG、6MWT、嚥下ならFOIS/EAT-10、認知ならMMSE/MoCA、疼痛ならNRS、栄養ならMNA、フレイルならCFSなど。

計測項目を時系列で「いつ・誰が・どの場面で評価するか」を合意しておくと、目標達成の見える化が容易になります。

2) プロセスと役割の見える化(“誰が・いつ・何をするか”の明確化)
– 役割責任マトリクス(RACI/RASCI): 各タスク(例: 早期離床、嚥下スクリーニング、家屋調査、退院調整、運転再開評価)に対し、Responsible(実行)、Accountable(最終責任)、Support(支援)、Consulted(協議)、Informed(報告)を明記。

病棟ホワイトボードや電子カルテのチームビューに簡潔に表示します。

重複や抜けを早期に発見できます。

– スイムレーン式ケアパス: 急性期→回復期→生活期のタイムラインに、各職種のアクションをレーンごとに並べ、トランジションの引継ぎポイント(SBARでのハンドオフ)を明示。

退院基準と在宅受入れ条件(例: ADL閾値、嚥下リスク、福祉用具、家族介護力)を見える化すれば、退院支援カンファの論点が明確になります。

– カンファレンスの定例化と構造化: 週1回のMDTカンファは、アジェンダを固定(1. 目標/GASの進捗、2. 退院見込み日と阻害因子、3. 在宅準備ToDo、4. リスクと安全対策、5. 次回までの役割分担)し、ファシリテーター(退院調整看護師やリハ医)を明確化。

記録は要点に集約し、ToDoをRACIに反映します。

– コミュニケーションの標準化: 急変・方針変更・コンサルトにはSBAR。

チームトレーニング(TeamSTEPPSのCUS、チェックバック、コールアウトなど)を導入すると、階層性のバリアを下げ、報告の質が安定します。

3) 成果と安全の見える化(“うまくいっているか”の透明化)
– 患者向けゴールボード: ベッドサイドに「今週の目標」「今日の重点」「退院までに必要なこと」を簡潔表示(個人情報配慮)。

患者・家族の安心感を高め、セルフマネジメントを促進します。

– ダッシュボード/KPI: 転倒・誤嚥・再入院率、退院支援の着手日、在院日数、アウトカム改善量(例: FIM効率)、家族カンファ参加率などを月次でチームに還元。

PDSAでプロセス改善につなげます。

– デブリーフとインシデント共有: 重大事例は、権限責めではなくシステム起因を探るリフレクションで共有。

チーム学習の文化が安心の基盤になります。

4) 合意形成の進め方(合意の質を上げるファシリテーション)
– 事前の“情報対称性”確保: カンファ前に、最新の評価指標と患者の希望を要約した1枚紙(サマリー)を配布。

非対称情報があると合意は崩れます。

– 論点の分解と選好の可視化: 退院先(自宅/施設)やリスク許容の度合いなど、論点ごとに選択肢・利点・不利益をリスト化。

患者・家族の選好(安全性優先か自立性優先か)をスケールで表し、衝突の源を可視化します。

– コンフリクトマネジメント: 価値の対立はファシリテーターが通訳し、暫定合意(タイムボックス付き)を設定。

エスカレーション基準(例: 飲水誤嚥が続けば経管を再検討)をあらかじめ合意。

– 法的・制度的要件の説明: 診療報酬上の算定要件(回復期リハ病棟の定期カンファ、リハビリテーション総合実施計画書、退院支援加算 等)を踏まえ、必要な面談・記録・多職種関与を明示すると、合意の実効性が高まります。

5) 実装例(脳卒中・軽度嚥下障害、在宅復帰予定)
– 共通言語: 退院2週前の目標「屋内歩行自立(TUG<20秒)」「ソフト食で誤嚥なし(FOIS5)」「入浴動作監視で可能」GASをT=0で設定。

– 役割RACI(抜粋): 嚥下再評価Responsible=ST、Accountable=リハ医、食形態変更Consulted=栄養士/看護、在宅環境調整Responsible=OT、家屋評価Support=ケアマネ、歩行耐久性向上Responsible=PT。

– ケアパス: 週次でBBS/TUG更新、誤嚥リスクは食後チェックリストで見える化。

退院1週前に家屋訪問→手すりと段差解消を決定。

SBARでケアマネへハンドオフ、訪問看護・訪問リハの役割を合意。

– 合意形成: 患者は自立性重視、家族は安全性重視。

段階的帰宅訓練(デイリハ併用)という第三案を提示し、2週間後に再評価という暫定合意。

6) よくある障壁と対策
– 階層構造: 若手が発言しづらい→TeamSTEPPSのツール(CUS、Two-Challenge Rule)、ファシリテーターの指名発言。

– 断片的な情報: 評価が各職のカルテに埋没→1枚サマリーとダッシュボードで統合。

– 時間不足: 15分カンファのタイムボックス、アジェンダ固定、事前非同期入力(電子フォーム)。

– 地域連携の切れ目: 退院前カンファを地域職種もオンライン参加、SBARで書面ハンドオフ、退院後72時間のフォローコール。

7) 根拠(エビデンス・制度)
– WHOのFramework for Action on Interprofessional Education & Collaborative Practice(2010)は、職種間連携がケアの質・安全に寄与すると整理。

– IPEC(米国)やカナダCIHCのコア・コンピテンシーは、役割明確化、相互尊重、チームコミュニケーション、患者中心を中核能力として定義。

– TeamSTEPPS(AHRQ)は、SBARやチェックバックなどの標準化ツールが医療過誤・インシデントを減らすことを多施設で示しています。

– リーヴスら(Reeves et al., Cochrane, 2017)の職種間連携介入レビューは、患者満足やプロセス指標改善、いくつかの領域で臨床アウトカム改善を報告。

– SDMはメタ解析で、知識獲得、意思決定の質、価値整合性の向上を示し、不要医療の減少にも関連(Elwynらの実践モデルが広く普及)。

– リハ領域では、GASの妥当性(目標到達の個別化評価)やFIM/MBI等の信頼性が多数報告。

ICFは国際的に標準言語として承認。

– 日本の制度根拠: 診療報酬におけるリハビリテーション総合実施計画書の作成・多職種カンファ要件、回復期リハ病棟の退院支援要件、地域包括ケアシステム推進(厚労省)。

NSTや褥瘡対策チームなど、多職種加算の枠組みは役割明確化と合意形成を促す制度的後押しです。

– 脳卒中ガイドライン(2021など)は早期離床、嚥下スクリーニング、退院支援の多職種連携を推奨。

8) すぐ始められるミニマムセット
– 1枚サマリー(ICF視点+GAS+主要指標)を週次更新
– RASCIで5つの重要タスクの責任を明確化
– 週1カンファの固定アジェンダとタイムボックス
– SBARテンプレでハンドオフ統一
– ベッドサイド・ゴールボードで患者・家族と目標共有

安心のケアは、単に専門性が高いだけでは実現しません。

「見える化された目標・役割・成果」をチームと患者・家族が共有し、合意を小さく早く積み重ねることが鍵です。

上記の枠組みを導入すれば、連携の手間はむしろ減り、重複や抜けが減少し、患者の安全と納得、そして職種間の信頼が着実に高まります。

連携の成果をどの指標で評価し、どのように改善へつなげるべきか?

ご質問の「医師・リハビリ職との連携で実現する安心のケア」を、どの指標で評価し、どう改善につなげるかについて、実務で使える測定設計と改善手法、そして主な根拠を整理してお伝えします。

ポイントは、患者・家族の安心感という主観的価値と、安全性や機能回復といった客観的成果の両方を、チーム連携のプロセスと結び付けて継続的に測ることです。

1) 評価の枠組み(構造・プロセス・アウトカム+患者体験)
– 構造(連携の土台)
例 職種構成と配置(医師、PT/OT/ST、看護、MSW、薬剤師)、資格・研修(ICFや摂食嚥下、認知症対応)、標準化ツール(SBARハンドオフ、電子カルテ共有、共通アセスメント)、地域連携基盤(退院支援体制、訪問系サービスとの接続、テレリハ環境)

プロセス(連携の質)
例 入院後24~48時間以内の早期リハ開始率、週1回以上の多職種カンファレンス実施率と参加率、個別リハ計画書の作成・更新率、目標設定のICF整合性・SMART度、標準ケアパス遵守率(脳卒中ユニット、股関節骨折、心不全等)、退院サマリー48時間以内送付率、薬剤師による退院時薬剤整理(メディケーション・リコンシリエーション)実施率、摂食嚥下スクリーニング実施率、家族教育・介護者トレーニング実施率
アウトカム(患者にとっての結果)
臨床・安全 
・合併症発生率(誤嚥性肺炎、転倒・転落、褥瘡、せん妄、カテ感染など)
・30日・90日再入院率、救急受診率
・在院日数、退院先(自宅帰還率)
・疼痛コントロール(NRS、BPI)、栄養・サルコペニア指標(MNA、握力、骨格筋量)
・嚥下機能(FOIS)、呼吸・心不全指標(mMRC、BNPなど領域別)
機能・自立 
・ADL/活動 FIM、Barthel Index、歩行・移動(TUG、6分間歩行)
・認知・気分 MMSE/MoCA、GDS、HADS
QOL・社会参加 
・EQ-5D、SF-12/36、復職・復学率、社会参加指標
患者経験・安心感(PREMs/PROMs)
例 患者満足度、チームの説明理解度、意思決定への参画(SDM-Q-9)、ケア移行時の不安軽減、在宅療養時の「連絡がつく・頼れる」感覚(Sense of Security in Careのような安心感尺度)、Patient Activation Measure(自己効力感)
効率・資源
例 1日当たりリハ提供単位、FIM利得/在院日数(FIM効率)、1エピソード当たりコスト、外来・訪問リハの継続率

2) 指標設定の実務ポイント
– 条件別の必須指標を決める
脳卒中 入院48時間内リハ開始、嚥下スクリーニング率、FIM利得・効率、退院自宅率、90日再入院率、肺炎発生率、EQ-5D
大腿骨近位部骨折 術後早期離床(24~48時間)率、歩行到達度、在院日数、30日死亡・合併症、退院自宅率
心不全/COPD 包括的心肺リハ参加率、再入院率、運動耐容能、自己管理スコア
回復期共通 週1回以上の多職種カンファレンス、退院支援着手日数、家族教育実施率、FIM効率

測定タイミングを標準化する
入院時/初回評価、2週ごと、退院時、退院後30・90・180日フォロー。

PROMs/PREMsは退院時と30~90日で反復。

リスク調整を行う
年齢、基礎疾患、入院時FIMや重症度(NIHSS、ASA、CCIなど)で補正し、ケースミックスの違いをならす。

可能なら回復期リハデータベースや全国ベンチマークと比較。

ダッシュボード化と可視化
月次でランチャートや管理図(SPC)を用い、信号とノイズを区別。

各指標は定義(分子・分母・除外)を明確化。

3) 改善(PDSA)にどうつなげるか
– 目標設定
例 脳卒中患者の嚥下スクリーニング24時間以内実施率を3カ月で70%→95%に。

30日再入院率を今期10%→8%に。

FIM効率を四半期で0.8→1.0に。

原因分析と主要ドライバー
特性要因図、5Why、ドライバーダイアグラムで、連携の断点(入退院時ハンドオフ、役割不明確、検査待ち、家族教育不足、外来・在宅への橋渡し不全など)を特定。

介入(エビデンスに基づく標準化とチームハビット形成)
・ハンドオフ標準化 SBARテンプレート、退院サマリー48時間以内送付、薬剤整合のチェックリスト
・早期リハ/離床 「48時間以内」トリガーオーダー、看護とPTの朝夕ラウンド、立位・端座位のプロトコル
・多職種カンファレンス 週1回固定、全職種必須項目(目標、退院先、リスク、役割)とICF視点でのGAS(Goal Attainment Scaling)運用
・合併症予防バンドル せん妄予防(ABCDEFバンドル)、転倒予防、褥瘡予防、口腔ケアと嚥下訓練、栄養介入(たんぱく質強化)
・摂食嚥下 全入院脳卒中患者へのスクリーニング、ST介入の早期化
・退院支援の前倒し 入院48~72時間以内に退院支援着手、家屋評価、家族トレーニング、福祉用具と住宅改修連携
・在宅・地域連携 訪問リハ/看護への温かいハンドオフ(電話/カンファ)、テレリハ・電話フォロー、緊急連絡体制の明示
・教育とチーム文化 共同研修(ICF、SDM、誤嚥・せん妄予防、SBAR)、デイリーハドル、ふりかえり(AAR)
・目標共有と見える化 個別目標を病室ポスターやEHRに掲出、家族と合意
実装科学の原則
小さく試す(1病棟→全院)、監査とフィードバックを定周期で、成功例の横展開、現場で使える「最小限のデータセット」を優先して負担を抑える。

バランシング指標(例 リハ強化による疲労・転倒増)も同時監視。

4) 具体例
– 脳卒中ユニット×回復期リハの連携
指標 嚥下スクリーニング24h実施率、早期リハ48h率、肺炎発生率、退院自宅率、FIM利得/効率、EQ-5D、30日再入院率、退院サマリー48h送付率
介入 標準パス、ST早期介入、看護とPTの朝ハドル、退院支援早期化、在宅ST/訪問看護との引継ぎ
結果の使い方 肺炎率増加の兆候→嚥下スクリーニング遵守と口腔ケア実施率を監査→担当割の再設計とeラーニング→翌月に改善確認

高齢者大腿骨近位部骨折の周術期連携
指標 術後48h離床率、せん妄発生率、在院日数、自宅退院率、30日死亡・合併症、歩行自立率
介入 整形外科×老年内科のコマネジメント、痛みと栄養のプロトコル、術翌日リハ、せん妄予防バンドル、退院先調整の前倒し

5) データ運用・ガバナンス
– 役割 医療の質・患者安全委員会、リハ責任者、診療科リーダー、データアナリスト、地域連携室、患者・家族代表
– 会議体 月次ダッシュボードレビュー、現場ハドル、四半期ごとの目標再設定
– IT EHRテンプレート、指標の自動抽出、アラート(48hリハ未実施)、在宅事業者との情報連携
– ベンチマーク 院内比較(病棟間)、地域・全国データベース(日本リハビリテーション医学会のデータ、回復期リハ病棟のFIMベンチ)、診療報酬の質指標

6) 根拠(エビデンスの要点)
– 多職種連携と専門ユニット
脳卒中ユニット 多職種チームによる系統的管理で死亡率・依存度・施設入所率の低下が示されており、機能回復と退院自宅率が改善(Cochrane Stroke Unit Trialists’ Collaboration)。

日本脳卒中学会ガイドラインでもユニット化と早期リハ、嚥下評価の重要性が強調。

股関節骨折 オーソゲリアトリック共同管理と早期離床は合併症・死亡・在院日数を減らし、機能回復を促進することが複数の系統的レビューで確認。

日本整形外科学会/日本老年医学会ガイドラインでも推奨。

早期リハ・離床
ICU・急性期の早期動員はADLと在院日数の改善、安全性の高さに関するエビデンスが蓄積(ただし超早期の脳卒中は慎重に AVERT試験)。

回復期では十分量・強度の訓練がFIM利得に相関。

合併症予防バンドル
せん妄 非薬物的多要素介入(睡眠、視聴覚補助、早期動員、疼痛・排泄管理)が発生率を低減(ABCDEFバンドル推奨)。

嚥下 脳卒中後の嚥下スクリーニングと口腔ケアは誤嚥性肺炎を減らすことが観察・介入研究で示唆。

転倒・褥瘡 多面的予防プログラムの効果が広く実証。

ケア移行と再入院
退院支援の前倒し、薬剤のリコンシリエーション、患者教育、電話/訪問フォロー等を組み合わせたトランジション・プログラムは30日再入院を減らす(ColemanのCare Transitions、NaylorのTransitional Careモデルなどのランダム化研究やレビュー)。

コミュニケーション標準化
SBAR導入は情報伝達の完全性とタイムリーさを高め、インシデントと医療合併症の減少と関連(多施設の前後比較・準実験研究)。

患者報告アウトカム/経験
EQ-5DやSF-36などのPROMsは機能・QOL変化の把握に有用で、リハ強度や退院先との関連が示される。

PREMsやSDM尺度はアドヒアランスや満足度と関連し、安心感の向上に寄与。

Sense of Security in Care(在宅文脈)等の安心感尺度も海外で開発・活用。

システム・枠組み
IHIのTriple/Quadruple Aimは「健康アウトカム・患者経験・コスト・スタッフのウェルビーイング」の同時達成を提唱。

WHOの統合型・人中心ケアや厚労省の地域包括ケア政策も、多職種連携・標準化・地域接続を中核に据える。

日本の回復期リハではFIM効率が質指標として広く活用され、データに基づく改善が促されている。

7) 成果を「安心」へ結びつける要点
– 数値の改善(安全・機能・再入院)を、患者・家族が体感できる情報提供(目標と進捗の見える化、退院後の連絡窓口、急変時の対応明確化)とセットにする。

– PREMs/安心感尺度を定期的に回収し、説明の分かりやすさ、連絡の取りやすさ、意思決定への参加度など具体的ドメインを改善ターゲットにする。

– ケアギバー支援(Zarit負担感の評価と支援策)を組み込み、家庭内の安心・継続性を担保する。

8) よくある落とし穴と回避策
– 指標が多すぎ現場負担になる→最小限データセット+自動抽出を優先。

段階導入。

– ケースミックス未調整で「不公平な比較」→リスク調整と層別化(高齢・重症・独居など)。

– 改善が一過性→標準業務(チェックリスト、EHRテンプレート)に埋め込み、監査・フィードバックを継続。

– 数値偏重で現場疲弊→スタッフのウェルビーイング指標(離職率、燃え尽き)を「バランシング指標」として見る。

まとめ
– 評価は、構造(体制)・プロセス(連携)・アウトカム(安全・機能・QOL)・患者経験(安心)をバランスよく。

– 指標は状態別に必須項目を定め、リスク調整とダッシュボードで可視化。

– 改善はPDSAで小さく速く回し、標準化・教育・地域接続・家族支援を組み合わせる。

– 根拠は、脳卒中ユニットやオーソゲリアトリック、早期離床、合併症予防バンドル、トランジション・ケア、SBAR、PROM/PREMの実証にある。

– 「安心」は数値の裏付け+丁寧なコミュニケーションと連絡可能性の担保で具現化する。

この設計で月次のダッシュボード運用と四半期の重点改善テーマを回せば、連携の成果を可視化しつつ、患者・家族にとっての安心と価値を継続的に高めることができます。

【要約】